2005 Fiscal Year Annual Research Report
重粒子線低線量照射で誘導される生物効果のバイスタンダー効果とそのメカニズム解明
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16510052
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
鈴木 雅雄 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線安全研究センター, 研究員 (70281673)
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Keywords | バイスタンダー効果 / 重粒子線 / ヒト皮膚由来正常細胞 / 突然変異誘発効果 / hprt遺伝子座 / 細胞間情報伝達 |
Research Abstract |
平成17年度は、昨年度より引き続き核子あたり6MeVのエネルギーの炭素イオンと新たに核子あたり6MeVのエネルギーの鉄イオンを加えて、ヒト培養細胞における生物効果のバイスタンダー効果誘導の実験的証拠とその核種およびエネルギー(LET)依存性を明らかにする研究を行った。 1、ヒト由来正常細胞の突然変異誘発効果 hprt遺伝子座における突然変異誘発頻度は、すべての細胞にイオンを照射したときと半分の細胞に照射したときでほぼ等しかった。この結果は、実際に炭素イオンのヒットを受けていない細胞も何等かのメカニズムによって突然変異に導かれた事を明確に示すものであり、バイスタンダー効果が誘導されたことを示している。また、半分の細胞に照射し同時に細胞間情報伝達を遮断した場合は、突然変異誘発頻度は著しく抑制されたことから、接触した細胞間の情報伝達が、細胞致死同様観察された突然変異誘発効果に対するバイスタンダー効果のメカニズムに重要な意味を持っていることを示唆するものである。 2、ヒトがん細胞株を用いた細胞致死効果に対するバイスタンダー効果 ヒト正常細胞とは異なる、ギャップジャンクションを介した細胞間情報伝達を示すと考えられるヒトがん細胞株を用いて、炭素イオンに対する細胞致死効果のバイスタンダー効果を調べた。得られた実験結果から、正常細胞で見られたような細胞致死効果に対するギャップジャンクションによる細胞間の情報伝達を介したバイスタンダー効果が見られなかった。 3、鉄イオンで誘発されるバイスタンダー効果 鉄イオンを照射した時の細胞致死効果と突然変異誘発効果は、炭素イオンの結果とは異なり、バイスタンダー効果が起こらないか、起こっても炭素イオンに比べて小規模である傾向であった。この結果から、イオンビームによって誘導される生物効果のバイスタンダー効果には、照射に用いるイオンの核種とエネルギー(LET)に依存することが示唆される。
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Research Products
(3 results)