2005 Fiscal Year Annual Research Report
表層土壌および郷土種を用いた木本植物によるのり面緑化技術の開発
Project/Area Number |
16510059
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
牧 理子 (増田 理子) 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (30304645)
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Keywords | 在来種 / 帰化植物 / 挿し木 / 環境復元 / 炭素固定 / 自然植生への遷移 |
Research Abstract |
平成17年度は実際に土嚢壁を底面3mx3m、高さ2m、傾斜角60度の大きさに組み、実際の植皮実験を継続して行った。植皮方法は1)挿し木(ツツジ、アカメガシなど平成16年度に比較的高確率で定着したものを用いた)、2)シイ、クヌギ、コナラなどの大きな果実を植生土嚢の間に挟み込む緑化方法、3)表層土壌を用いた緑化方法の3条件を用いた。その結果、それぞれの緑化方法について以下のような結果が得られた。 1)さし木を用いた緑化 前年度の試験により効率の良かったツツジ、アカメガシに関して、毎月カウントを行い、枯れた部分には新たに挿し木をするという方法で緑化を行った。4月から8月にかけては自然降雨による水分補給を行うのみであったが、9月から3月にかけては定期的に水やりを行い、定着率の違いについての検討を行った。挿し木の定着率は水やりを行わない場合には50%程度であったが、水やりを行った場合には90%以上であった。また、土嚢壁下部の死亡率が高く、光の利用効率が死亡率に大きく関係していることが示された。 2)シイ、クヌギの種子による緑化 シイ、クヌギなどは日本の在来植生の代表種と考えられている。そのため、最近ではこれらの幼樹を植樹し、緑化することも多い。これらの種子は休眠性が無く種子による緑化が難しいと考えられていたが、植生土嚢に挟み込むことで緑化が可能であることが示された。また、緑化時期は5月から6月頃であるため遅めであるが、転葉後は直ちに全体が緑に覆われるため緑化効果は大きかった。これまで、種子による保存が難しいとされており、非常に高価な緑化であったが安価な簡単な緑化方法の可能性が示唆された。 3)表層土壌を用いた緑化 表層土壌は平成16年秋に徳山ダムの建設により水没する杉林の林床から採集してきた。一年間に渡り、調査を行った結果、表層土壌土嚢から芽生えた実生のほとんどが飛来して定着した種子であることが確認された。表層土壌を用いた緑化がいろいろな場所で実験的に試みられているが、土壌が深く豊か出ない場合には土壌中の種子含有量が十分でなく、自然植生を再生するのに十分でない場合があることが示唆された。今回の実験で特に確認されたのは、林床植物の芽生えは芽生えてまもなく強い光と乾燥にさらされるため死亡率が高いということである。林床のシードバンクからの種子発芽による回復は十分な植皮に覆われた後に行われる可能性もある。つまり、表層土壌を用いる場合には表層土壌の成分に左右されるという結果を得た。 1)2)3)の結果から、土嚢緑化を行う場合、施工時期、施工条件においていくつかの手法が有効であることが今回の実験から示された。灌水が可能である場合には挿し木による緑化が速効性、定着性から有利であること、これまで予算金額によって制限されていた自然林の復元にシイ、クヌギが安価に提供できる可能性が示された。
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