2005 Fiscal Year Annual Research Report
医食同源の視点から薬用植物中のがん転移抑制および分化誘導物質の探索
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16510168
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Research Institution | KYOTO PHARMACEUTICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
松田 久司 京都薬科大学, 薬学部, 助教授 (40288593)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 雅之 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (90116129)
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Keywords | 基底膜浸潤阻害作用 / MMP産生抑制作用 / 分化誘導作用 / アポトーシス誘導作用 / Erycibe expansa / タイ伝統薬物 / Nuphar pumilum / 6-hydroxythiobinupharidine |
Research Abstract |
従来の天然および合成有機化合物の抗がんスクリーニングには各種腫瘍細胞の増殖抑制作用を指標におこなわれてきたため、多くの薬物は正常細胞に対しても強い毒性を示し、副作用が強いといった難点が挙げられている。このような背景のもと、がんの悪性化を妨げる医薬品の開発が望まれている。 平成16年度に引き続き、中近東および東南アジア地域の植物ライブラリーについて検討したところ、タイ天然薬物Erycibe expansaにヒト繊維肉腫HT1080細胞の基底膜浸潤に対する阻害活性を見出した。その活性成分の探索を行ったところ、deguelin, tephrosin, rotenoneおよび12a-hydroxyrotenoneに有効性を見出した。さらに、基底膜浸潤阻害活性のメカニズムについて実施したところ,MMP-9の産生を阻害することが明らかになった。また、これらの化合物は浸潤抑制活性を示した培養24時間までは細胞の増殖抑制活性をほとんど示さなかったが、48時間以上培養することで細胞の増殖抑制活性が認められた。さらに、イソフラボンgenisteinにはヒト前骨髄性白血病細胞株HL-60に対する分化誘導能が報告されているが、NBT還元能をHL-60の分化誘導マーカーとしたアッセイ系においてdeguelinやtephrosinにもgenisteinとほぼ同程度の活性を有することが明らかになるなど、新しい抗がん薬のシーズとして期待できた。 その他、乳香に含まれるurs-12-ene-3β,11α-diolなどのウルサン型トリテルペンに分化誘導促進活性が認められた。さらに、平成16年度にNuphar pumilumを基源とする川骨から単離した6-hydroxythiobinupharidineに極めて短時間でアポトーシス誘導活性が見出されたことから、構造活性相関を明らかにする目的で、多数の関連アルカロイドについて検討した。その結果、6位水酸基を有する含硫黄セスキテルペン二量体構造が活性発現に重要であることが判明した。また、アポトーシス誘導の作用機序について検討したところcaspase-8を経由したメカニズムが推察された。また、大良姜および月桂樹から単離した1′S-1′-acetoxychvicol acetateやconstunolideは核内転写因子NF-κBの阻害活性などが見出され、マウス繊維芽組織由来L929細胞を用いた実験において、TNF-αによって誘発される細胞死を増強させることを明らかにするなど、平成17年度の当初計画をほぼ達成したものと考える。
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