Research Abstract |
平成16年度の結果を基に,更に以下の点について検討した. (1)新規遺伝子型(ALTS)に関して,主要3カ国(日本,ブラジル,タイ)の比較 (2)従来法による遺伝子型(A, B, C, D, E)毎の薬剤感受性試験 (3)総括 主要3カ国に絞り込んで,新規遺伝子型(ALTS)に関して行なった比較(1)では,日本とブラジルが類似の分布パターンを示したのに対して,タイでは別の分布パターンを示した.更に,従来法による遺伝子型(A, B, C, D, E)と組み合わせることにより各国固有の分布パターンを示した. 薬剤感受性試験(2)の結果は,従来法による遺伝子型(A, B, C, D, E)毎の明らかな差は認められなかった. 総括 分子多型の指標として用いた従来法による遺伝子型(A, B, C, D, E)と新規遺伝子型(ALTS)は全く別の領域をコードするものでおそらく相互に関連性は無いと思われる.このような2種類の指標を用いて行なった今回の分子多型解析の結果は主要3カ国の比較において明らかなる差を示し,今後これらの指標がカンジダ・アルビカンスの多型解析に多いに役立つことが示された.しかしながら,病型あるいは由来病巣との因果関係を推測できる関連性は見いだされなかった.元来カンジダ・アルビカンスはヒト常在菌とも言われ,カンジダ症として発病した場合でも元々患者がノーマルフローラとして保菌していたものが優先的に増殖したものと考えられており,病巣との強い因果関係よりも患者の生活環境に関連していると考えた方が妥当である.よって,今回の結果に示すように,国毎に多型パターンが異なると言うのは,病巣あるいは病型とのリンクよりも生態学的なリンクが示されていた. 薬剤感受性を含む生理学的性状では特にこれら多型とリンクするデータは見いだされなかった.しかしながら,遺伝子型Dは一般的にアゾール耐性株が多いと言われているので,元々耐性であると言うよりも,耐性を獲得しやすい性質であることも考えられた. 今後これら2種類の遺伝子型は,株識別への利用が可能となり,保菌者の相互関連や感染経路の探索などいろいろな方面への利用が期待される.
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