Research Abstract |
1)南アルプス(聖岳,上河内岳,イザルヶ岳)において環境省および文化庁の許可を得て,ニホンライチョウ10個体(雄7,雌3)から血液を採取した.栄養状態や羽毛状態に著変は認められず,すべて健常個体であると診断された. 2)血液塗抹染色標本を光学顕微鏡下で観察したところ,全個体にLeucocytozoon sp.の感染を認めた.Ashford Scaleによる原虫寄生率は,1から3であった.原虫の形態および計測値から,北アルプスのニホンライチョウから検出されているL.lovatiと同種であると判定した.他の住血寄生虫感染は認めなかった. 3)南アルプス(北岳,仙丈ヶ岳)において,L.lovatiを媒介していると考えられる吸血昆虫を捕獲調査した.7月の北岳では,アシマダラブユ21頭(すべて雌)を捕集した.8月の同地における調査では,吸血昆虫の生息が確認されなかった.7月の仙丈ヶ岳における調査では,アシマダラブユ,クロオウブユが11頭捕集された.その内訳は,アシマダラブユが8頭,クロオウブユが3頭であった(すべて雌). 4)北アルプス(立山室堂平,蝶ケ岳)において吸血昆虫を捕獲調査した.6月の蝶ケ岳では,アシマダラブユ167頭,オオブユ52頭,クロオオブユ4頭,キアシオオブユ6頭,ツバメハルブユ3頭の計232頭を捕集した. 5)2004年に北アルプスで捕集されたアシマダラブユおよびウチダツノマユブユ24頭の唾液腺からDNA抽出し,PCR法でL.lovati遺伝子の増幅を試みたところ,16.6%に当血液原虫遺伝子の存在が確認された.この増幅産物の塩基配列は,ニホンライチョウから検出されたL.lovatiのものと100%一致していた.
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