2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16510186
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 明 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90212513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平松 幸三 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (70026293)
安藤 和雄 京都大学, 東南アジア研究所, 助教授 (20283658)
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Keywords | アクター・ネットワーク論 / 生態心理学 / メディオロジー |
Research Abstract |
本研究は、昨年度に引き続き、科学技術の社会学・人類学が培ってきたアクター・ネットワーク論を地域研究に援用し、地域における出来事や事象を、人、モノ、言葉(記号)のネットワークとしてとらえ、それらを動態として記述・分析することを目指した。ここでは、これまで本研究の研究代表者と研究分担者が個別に関わってきた開発(足立、スリランカ)、在地の技術(安藤、バングラデシュ)、基地(平松、沖縄)の事例研究を、アクター・ネットワーク論的に再構成することで、地域研究におけるアクター・ネットワーク論的な展開の可能性を個別・具体的に議論した。 本研究をとおして理論的・方法論的に明確になってきた点は、人とモノの関係を考える前提に関してである。すなわち、人は文化的道具(言語、技術、改変された自然物など)に媒介されて活動するのであり、その過程では、われわれの「心」は両者の間に存在するという点である。これは、「主客未分」の立場というものが、哲学的な議論や宗教的修行に基づく必要はなく、われわれのあらゆる活動において日常的に行っている媒介過程であるという点である。この認識をとおして、アクター・ネットワーク論的な研究方法における生態心理学的な前提が明確になった。また、これらの生態心理学的なアクター・ネットワーク論の具体的な展開は、より歴史過程における制度とモノの媒介過程に着目するレジス・ドブレなどのメディオロジーと同じ認識論的・方法論的な立場であることも明らかになってきた。 その結果、われわれの具体的な検討課題は、個別の研究テーマにおける人と制度、およびモノの媒介過程に見られるアクター・ネットワークの生成・変容となる。例えば、在地の技術とは、在地の人々が、在地の事物に込められた記憶やその機能・形態全体を文化的道具として(意識的・無意識的に)活動し、その活動の結果であるということが判明してきた。本研究において、この媒介過程をより詳細に分析し、記述するという理論的・方法論的展望が開かれたといえる。
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Research Products
(5 results)