Research Abstract |
東南アジア大陸山地部におけるヒト・モノ・情報の流動に関して,国内では,これまでの研究成果に関する文献や情報の収集を実施した。また,空間分析データ構築のためのラオス国内のデジタルデータ,およびヴェトナム北部の地形図を入手した。現地調査に関しては,ラオス北部ウドムサイ県,およびヴェトナム北部ライチャウ省とラオカイ省で実施した。ラオスでは国立農林業研究所,そしてヴェトナムではヴェトナム農業科学研究所とヴェトナム国立大学ハノイ校の自然資源・環境研究センターと共に調査を実施し,今後も共同で研究する体制を確立した。 調査の結果,ラオスでは中国からの影響が大きく,特に中国国境付近のラオス農山村では,ハイブリッド・トウモロコシとゴムの栽培が開始されている。これらの商品作物は,ほぼ全量が陸路で中国へと輸出されており,国内では使用されていない。また,焼畑によるハトムギの栽培もラオス北部で開始されており,.ハトムギはタイへと輸出されている。一方のベトナム北部の農山村では,盆地では水稲作に特化しており,傾斜地などは焼畑ではなく常畑で国内向けのハイブリッド・トウモロコシや茶,食用カンナなどを栽培しており,中国への輸出に特化した作物栽培はほとんど見られなかった。 ラオスとヴェトナムの栽培作物の違いは,国内市場規模の違いと理解することができよう。ラオスの場合,国内市場が小規模のため,中国市場の影響を受けやすい。加えて,これまで焼畑による土地生産性の低い陸稲作を中心とした農業を行ってきたため,土地生産性の高い商品作物の導入と土地利用の転換は容易に進んだ。ラオス農山村部には,中国商人と密接に結びついている仲買人が農産物の買取に訪れており,仲買人からの情報によって,栽培作物種を変更させている可能性が高い。今後は,こうした仲買人の動向を中心に,近年の変化が大きいラオスを中心に調査を進めていく。
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