Research Abstract |
東南アジア大陸山地部におけるヒト・モノ・情報の流動に関して,2000年以降継続的に実施してきた研究成果と昨年実施した調査結果(ラオス北部ウドムサイ県,およびヴェトナム北部ライチャウ省とラオカイ省)に関して,第1回ラオス研究国際会議(2005年5月20〜23日,アメリカ合衆国イリノイ州北イリノイ大学)で発表した。また,渡米の際に,ハワイ州に位置する米国立東西センター(East-West Center)で,東南アジアの環境研究を専門としている研究者(Dr.Jeff FoxとDr.Terry Rambo)と情報交換をおこない,また過去の資料収集を実施した. 昨年度の現地調査では,近年もっとも変化が大きいラオスを中心に調査地を絞り込むことにした.そして今年度は,ラオスにおいて,海外に輸出されている農林産物の動向,および社会主義時代の農山村-都市間の農林産物仲介についての調査を実施した.調査の結果,北部における農林産物取引は,中国市場の影響が大きく,ベトナム市場はほとんど影響していないことが明らかになった.主として中国と取引されている農産物はトウモロコシ,サトウキビ,ゴムである.特にサトウキビとゴムは契約栽培の形態が多く,中国との直接取引によって実施されている.ラオスの仲買人を介して取引されるトウモロコシは,都市部の仲買人が農山村部に出かけてトウモロコシを買い取り,その後,中国に自ら運搬することが明らかになった.林産物に関しては,主として都市部の仲買人を介して中国に送られていることもわかった.そして,定期市や常設市場などの場所でも,農林産物の買取が実施されている.このような農林産物の仲買は,1986年のラオス版ペレストロイカであるチンタナカンマイ以降に見られるようになった.社会主義時代の仲買は政府によって管理されており,規模の大きな村に置かれていた政府販売店(ハンカーコンラット)で農林産物の買取と日用品の販売が実施されていた.来年度は,政府販売店から個人仲買人に変化し,また定期市や常設市場などが立地することなり,その影響で,村落自体がどのように変化したのか明らかにしていきたい.
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