2004 Fiscal Year Annual Research Report
北朝鮮社会主義体系の適応遅滞が対外政策に及ぼす影響:核外交を中心に
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16510189
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
金 聖哲 広島市立大学, 付置研究所, 助教授 (10372872)
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Keywords | North Korea / systemic dissonance / retardation of adaptive process / opening / nuclear diplomacy |
Research Abstract |
この情報源に関する幾つかの分析を試みた主な目的は、北朝鮮体制の実態と特異性を探り、且つ特に金正日支配下における同体制変貌の様子を考察するというものである。こうすることで初めて現在の核危機がいかにして発生し、それがどういう方向に進展しようとしているかが明らかになるであろう。2002年10月北朝鮮がウラン濃縮計画を推進していることを認めたことに端を発するこの問題は、2005年2月に同国が核保有国の名乗りを上げたことで更に悪化したのである。 殆どの情報源は以下に挙げるように文書の形を取っている。その分析結果の要約は次の通りである。 (1)現在北朝鮮体制は、その本来の形から大幅に変容している。元々1945年から1950年代半ばにかけて確立・強化されたこの体制の本質は3つの点に集約されるのであるが、これらの特質を基盤とした上で様々な要素が繰り返し再生され、その本来の形が全体として継承された。そしてその一方で、これらの要素を通じ、機能の多様化もなされたのである。 (2)北朝鮮体制の3つの特質とは、(a)公共の利益が優先されるという社会主義の原則。スターリン支配下の旧ソ連、毛沢東による共産主義体制が敷かれた中国などもそうであった。(b)反帝国主義。例えば米国に向けられた激しい敵意や、その同盟国である韓国に対する対抗意識など。こうした感情の大部分は、国家の分断や朝鮮戦争に起因するものである。(c)抗日ゲリラの伝統。金日成の武力闘争や歴史の捏造などがその根底にある。金氏とそのゲリラ仲間による独裁体制を正当化することを目的としている。 (3)1973年金正日が後継者として浮上し政治への関与を強めるに連れ、これらの特質は徐々に変化を見せ始める。更に、東欧における社会主義体制の崩壊、及び1980年代後半から1990年代半ばにかけての飢饉発生という二つの大きな流れが同国体制変貌のプロセスに激しい揺さぶりをかけ、深刻なエネルギー不足と食糧不足をもたらしたことは特筆すべきであろう。 (4)第二次経済の広まりにより社会主義原則の失墜が始まっている。又一部には反帝国主義の放棄も見られる。現在懸命に米国への接近を図り、特定の分野に限って韓国へ開放もなされるようになったことなどから見ても、これは明らかである。又、戦略的見地から軍事優先策を取るようになって正規軍の役割が増してきたことから、抗日ゲリラの伝統も大きく揺らいでいる。
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Research Products
(2 results)