2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国近代にみえるアジア間思想文化連鎖の、ジェンダー軸による研究
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16510196
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
坂元 ひろ子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (30205778)
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Keywords | ジェンダー / アジア観 / 思想文化連鎖 / 纏足 / 漫画雑誌 / 画報 / 民族 / 翻訳 |
Research Abstract |
羅森や王韜、何如璋、黄遵憲、宋恕、梁啓超、秋瑾ら19世紀後半〜20世紀初に外国滞在を経験した中国知識人、さらに清末から民国期にかけての『浅説画報』『図画日報』『上海漫画』『時代漫画』『万象』等の画報・漫画雑誌類におけるアジア観・アジア表象などにおいて、民族コンプレックスと重層をなしながらジェンダーがいかに表象されているかを、アジアの思想文化連鎖の中に位置づけて分析した。対日観では日本がまず拓殖の対象として喧伝していた北海道のアイヌに対する関心がとりわけ強いこと、これが1903年の大阪勧業博での人種・女性差別的な「人類館」事件の根底にあったことも分かった。他方、植民地的近代におけるアジア間文化連鎖としては、中国の纏足女性・阿片吸引男性もモデルとする旧絵はがきや旧写真が漫画雑誌同様、シンガポールなど、実に広範囲にみられ、これはなおも調査を要するが、その一端を分析した。 連鎖の対象として、清末には「中国」という共同体意識、女性自らの「国民の公母」意識、「男女平等の幸福」のための教育への希求を経て、民国期の知識人に限らずより広範な、身体の自由を獲得しつつあった新しい女性の文化として、租界を有する上海を中心としたモダンガールに注目し、その前衛的な漫画雑誌における表象を戦争との関係等も含めて分析した。そのなかで民国期の唯一の女性漫画家、梁白波に着目し、先駆的な研究をおこなった。また、前衛的な漫画雑誌そのものも、欧米の漫画雑誌のみならず、日本の岡本一平らとの関連性をも見出し得た。さらに新女性・モダンガールの朝鮮やベトナムでの様相についても、雑誌・新聞雑誌資料において見当をつけるところまでにこぎつけた。 ことばの面でも漢語圏内では、たとえばeugenicsの「優生学」という訳語の定着にあっても、日中間での連鎖がみられ、朝鮮やベトナムでも調査してみる必要があると分かった。
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Research Products
(6 results)