2006 Fiscal Year Annual Research Report
選挙におけるジェンダー・ファクター:アメリカ、スコットランドと日本
Project/Area Number |
16510202
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Research Institution | Asai Gakuen University |
Principal Investigator |
相内 眞子 浅井学園大学, 人間福祉学部, 教授 (60281771)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相内 俊一 小樽商科大学, 大学院・商学研究科, 教授 (90113505)
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Keywords | 女性議員 / ジェンダーファクター / 党派性 / アメリカ議会 / スコットランド議会 / 衆議院 |
Research Abstract |
本研究の目的は、女性議員の選出に作用するファクターを、アメリカ、スコットランド、日本の比較を通して検証することにあり、平成16年度から18年度にかけて、各国の選挙の実情に関し、当事者や研究者へのインタビューも含めて情報を収集した。18年度は最終年度であることから、アメリカの女性候補支援団体を調査し、女性候補の選出に関わる国際比較のポイントを整理する作業に着手した。 アメリカでは、2004年(平成16年度)に大統領選挙と連邦議会選挙、2006年(平成18年度)には中間選挙が実施され、選出される女性数は増加傾向にあり、連邦議会における女性議員は着実にその存在感を増しつつある。一方で、二つの選挙は、9.11やアフガニスタン、イラク戦争以降のアメリカ社会における価値観の対立や先鋭化する党派性が、女性候補の成否に大きな影響を及ぼすことを示す結果となった。すなわち、ジェンダーという括りだけでは、女性の選出プロセスにおける特殊性や共通性を探り出すことが困難になったのである。党派性の問題は、政党の意味と意義が、アメリカに比してはるかに大きいスコットランドや日本の場合には、より鮮明になることが予想される。 スコットランドにおいては、スコットランド議会における女性議員比率が安定して40%ラインにあることから、労働党が男女比を50:50とする候補者選定原則を廃止した。スコットランド議会選挙のレベルでは、労働党がどのような原則によって候補者を選定し、それがどのようなジェンダー・ファクターとなったかが新たな分析対象となった。しかし、2007年5月に、スコットランド議会と同時に行われるカウンシル(市町村に該当する行政区)選挙には、新たにSTV方式の選挙制度が導入される。このことは、従来の小選挙区における候補選定、比例代表選挙における名簿順位などに発揮されていた政党のジェンダー・コントロールが、大きく有権者の選好に委ねられることを意味し、カウンシルレベルの選挙では、ジェンダー・ファクターは政党よりも候補者個人と有権者との関係によるところが大きくなる。 日本においては、2005年(平成17年度)9月に衆議院選挙が実施され、自民党が党史上例を見ない多数の女性候補を擁立し当選させた。この結果、女性国会議員数は史上最多となったが、保守・政権与党における多数の女性議員の誕生は、主流政治のアウトサイダーであることがクライテリアの一つと考えられてきた女性議員の存在意義を変化させた。 以上の考察に基づき、本研究における国際比較は、「女性候補と党派性」を主軸に議論が展開される。
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