2004 Fiscal Year Annual Research Report
近世民衆の生命観と女の身体観-仙台藩領内を中心に-
Project/Area Number |
16510208
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Research Institution | Junsei Junior College |
Principal Investigator |
沢山 美果子 順正短期大学, 幼児教育科, 教授 (10154155)
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Keywords | 懐胎・出産取締り / 生殖 / 出産 / 生命観 / 身体観 |
Research Abstract |
今年度は、仙台藩の支藩である一関藩をフィールドに、夏に、一関市博物館で史料収集、撮影をおこない、史料の読み本作成をおこなった。また、その成果を「順正短期大学研究紀要」にまとめ、さらにその内容を京都橘女子大学、女性歴史文化研究所公開研究会で報告し、紀要原稿を大幅に加筆修正したものが、「京都橘女子大学女性歴史文化研究所紀要」に掲載された。また、3月には、再び一関市博物館で、史料収集と撮影、及び、旧一関城下のフィールドワークをおこなった。 一関市博物館で、主に収集した史料は、一関藩家老、沼田家文書に残されている、19世紀前半の文化8年(1811)から嘉永7年(1854)までの育子法関係の史料である。それらは,大別すると(1)「育子御仕法取行方」などの育子仕法をめぐる法令、あるいは「育子方御用留」など、勤役関係の記録、(2)妊娠、流産、死産の記録、(3)出生や育子御手当てに関する記録、(4)藩の医学校、慎済館の医師から藩に対してなされた提言などである。 これら育子仕法に関わって作成された記録は、支配層の手によって記されている点で、注意深い読み取りが求められるものの、そこに生きた人々の行動や心性を探るうえで、重要な手がかりとなることも確かである。また、政治権力が作用する出産の場に対する数的、質的アプローチを可能にする史料でもある。 今年度は、これらの史料を用いて、近世末の一関藩における<産む>身体の位相を、育子仕法という政治権力が作用する出産の場、そして生殖への藩の側の介入のプロセスを通して、また、出産をめぐる藩、社会、家族、そして医者、産婆といった諸関係の中で考えてみた。 その結果、従来、明らかにされていなかった武士層に対する懐胎・出産取締りや堕胎・間引き取締りの実相、藩の医師と、民間の医師、産婆との堕胎・間引きをめぐるせめぎあいなど、興味深い事実を明らかにすることができた。
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