2005 Fiscal Year Annual Research Report
近世民衆の生命観と女の身体観-仙台藩領内を中心に-
Project/Area Number |
16510208
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Research Institution | Junsei Junior College |
Principal Investigator |
沢山 美果子 順正短期大学, 幼児教育科, 教授 (10154155)
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Keywords | 懐胎・出産取締り / 生殖 / 出産 / 生命観 / 身体観 |
Research Abstract |
今年度も、昨年度に引き続き、仙台藩の支藩、一関藩家老の沼田家文書を手がかりに、近世末の一関藩における<産む>身体の位相を、育子仕法という政治権力が作用する出産の場、そして生殖への藩の側の介入のプロセスを通して明らかにする作業を行った。その成果は、拙著『性と生殖の近世』のなかの第一章、また『徳川日本のライフコース-歴史人口学との対話-』に収録した。 また今年度は、昨年度の調査で明らかになった出産に関わる多様な医療者(藩の医師と、民間の医師、産婆)の実相を明らかにするために、夏に、花泉町役場、一関市博物館で史料の収集と撮影をおこなった。花泉町で収集したのは、一関藩領内流村の医師で、藩医となった千葉理安に関する観音堂文書である。ここには、千葉理安が創設した施無為堂で学んだ医者たちの堕胎は行わないと記した誓詞や千葉理安の診察記録が含まれており、この地域の医療の状況がわかる興味深い史料である。また一関市博物館では、一関城下の藩医、建部清庵塾の診療記録の収集および撮影を行った。この史料には、患者の地理的分布、疾病の状況、患者の性別など豊富な情報が含まれており、身体観、生命観に接近する重要な手がかりとなる。 また昨年度収集した沼田家文書の中から収集することができた着帯届、懐妊届、出産届、名号届、死胎、流産届など、939件の武士の妊娠、出産に関わる諸届をデータベース化するとともに、武士層への育子手当の制度と実際についての分析を進めた。その成果は岡山地方史研究会の例会で報告するとともに、『立命館大学人文研紀要』87号に執筆した。武士層に対する育子手当に関する研究はいまだなされていない点で、武士層への育子手当の実際が明らかになった点は大きな成果であった。さらに現在は、一関領内狐禅寺村の小野寺家文書に収められたし懐胎・出産に関する史料を手がかりに武士層と農民との比較分析に取り組んでいる。
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Research Products
(3 results)