2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520003
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
清塚 邦彦 山形大学, 人文学部, 助教授 (40292396)
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Keywords | 絵画 / 描写 / 虚構 / 感情表現 / 音楽 |
Research Abstract |
本年度の研究は、前年度の研究を継続する形で、二つの軸に沿って進められた。一つは、絵画における虚構概念の分析、もう一つは、絵画における感情表現の分析である。以下、それぞれについて簡単に解説する。 (1)絵画による描写・再現の働きを分析する際に、虚構概念に解明項を求める考え方は、K・ウォルトンの理論をはじめ、現代における代表的な見解の一つとなっており、私自身、その見解に好意的なスタンスで画像の意味論研究を進めてきた。しかし、どちらかと言えば文学作品や劇作品を模範例として語られることの多い「虚構」概念を、絵画作品に適用した場合に、虚構概念はどのような変容を(あるいは一般化を)受けることになるか、それを見極める作業が、今年度の課題の一つである。この点については、来年度中に一応の決着をつけたいと考えている。 (2)絵画による感情や思想の「表現」の分析に関しては、前年度には予備的な考察として音楽美学におけるピーター・キヴィPeter Kivyの一連の著作の検討を行なったが、今年度は、それを継続すると共に、主に絵画の場合を焦点に置いて、ゴンブリッチ、グッドマン、ウォルハイムらの一連の代表的論考の批判的検討を行ない、これら一連の論考を包括する議論の枠組みを明確化することが、研究の主たる目標となった。この点についても、成果の公表は来年度に持ち越される形となったが、絵画表現論を展開する際の基本的な構図については一応の見通しが得られたものと考えている。
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