2004 Fiscal Year Annual Research Report
予防医学における自律とパターナリズムに関する倫理学的研究
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16520004
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
服部 健司 群馬大学, 医学系研究科, 教授 (90312884)
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Keywords | 予防医学 / 健康 / 自律 / パターナリズム |
Research Abstract |
本年度は、予防医学に内在する倫理問題に関する各論的考究を可能にするために避けることのできない総論的な根本概念について、焦点を絞りこんで考察をおこなった。 1.健康概念の再検討。医学においてもっとも根本的な概念のひとつは、健康である。しかし、外見上の印象とは裏腹に、健康とは何かは決して自明ではない。本研究においては、ヌーデンフェルトの説をはじめとする健康概念モデルの批判的検討を通して、概念使用の場を分節化することが大切であること、健康概念の本来的使用の場が日常生活であり、臨床医学の場よりも予防医学の場の近傍にあることを明らかにした。また原初的健康および理想的健康という二分法を導入して、前者の受動的、未規定的性格を浮きぼりにした。 2.自律概念の再検討。医学哲学・倫理学の領域において用いられる自律概念では、他者からの強制・操作をのがれた自己決定という意味が前景に立っており、カントによって基礎づけられた勝義の自律概念のもつ理性的、道徳的性格とは切り離されていることを明らかにした。またさらに、自己責任というキーワードを機軸として、予防医学における自律概念の輪郭と特異性とを浮きぼりした。 3.パターナリズム概念の検討。ウィクラーやブキャナンたちによる分析を手がかりに、医学におけるパターナリズムの正当化の作業を吟味した。また、看護領域で近年唱導されているアドボカシーのある種の形態の実体がパターナリズムであることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)