2004 Fiscal Year Annual Research Report
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16520022
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
松尾 雄二 宮崎大学, 教育文化学部, 助教授 (70040996)
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Keywords | アリストテレス:キケロー:トマス・アクィナス:ライプニッツ:ヨゼフ・ピーパー / 徳倫理学 / 正義 / 思慮(prudentia) / 四枢要徳 / 17世紀科学革命 / 古典キリスト教 / 目的論的・生命態的自然像 |
Research Abstract |
クロノロジー作成のためには、全体としてのライプニッツ哲学研究を前提とする。そのなかで特に、倫理学およびキリスト教からの人間像を問題にしつつ所期の研究目的に近づくというのが、本年度の主な仕事となった。 具体的には、現代ドイツの哲学者ヨゼフ・ピーパー『四枢要徳(Ueber die Tugenden)』を手がかりに徳倫理学の古典であるアリストテレスとトマス・アクィナスの徳論を研究し、またこれが近世にどのように受容されて姿を変えているかを調べ、さらにライプニッツについて、近世に居ながら古典の価値を後世に伝えようとする彼の立場が、その著書・書簡のあちこちに散りばめられていることを確認した。この点で、同時代の多くの倫理学者・神学者・政治学者との書簡交流がクロノロジカルにどのように散らばっているか、興味深い。 現実派のライプニッツは、一方で掟と意図との繋がりを大切にし、他方でその意図を実現すればどのような結果が得られるかという繋がりを見通す能力、すなわち思慮の徳(prudentia)を重視するはずである。カントの義務論とは異なった倫理学の方向があるはずである。 また、このような方向の彼の倫理学は、デカルト的・近世科学的自然像を古典的・生命態的自然像の中にどのように位置づけるかという問題とも繋がっており、これらの問題の同時代者たちとの討論書簡がクロノロジカルにどのように展開しているか、これまた興味深い。合わせて、平成17年度の継続研究の強い動因となっている。 クロノロジー作成の基本文献となるアカデミー版ライプニッツ全集は、今年度は一冊のみ刊行、3月に入手している。予定していた10巻のデータ入力のうち、今年度中に済ませたものは二巻である。 また、ピーパー上掲書については、拙訳を近い内に上梓できればと思っている。
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