2005 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭における日独米の女性運動指導者に見る優生思想と育児観の比較研究
Project/Area Number |
16520025
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
掛川 典子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (60185858)
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Keywords | 近代女性史 / 優生思想 / 育児観 / 母性保護運動 / 日本:ドイツ:アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
1「研究の目的1」として掲げた「20世紀初頭の日本における女性運動の指導者たちに見られる優生思想と育児観の検討」のため、本年度研究実施計画1〜2に対応する研究として、特に平塚らいてうにおける優生思想と育児観を取り上げた。平塚らいてうは、『青鞜』誌上においてすでに、自覚的な女性は少なく産んで良い教育を授けるべきという考え方を書いており、避妊・堕胎の承認という自主的母性の萌芽的発想も指摘できる。『青鞜』の他の執筆者にも社会的ダーヴィニズムが確認できる。らいてうは、エレン・ケイへの傾倒の著しい「母性保護論争」を経て、母子保護の構想に向かうが、性病防止の側面など家族の健康からの発想であって、優生思想の問題性に対して無防備である。らいてうの育児観は、子どもの自主性と才能を尊重するリベラルなものではあった。 2「研究の目的2」として掲げた「20世紀初頭のドイツとアメリカ合衆国における、進化思想に裏付けられた合理的家事改革論と母性保護論及び女性運動穏健派の母性論・育児観の分析と比較」のために、本年度研究実施計画3〜7に基づき、本年度はさらに文献を購入し、特に貴重なドイツ語文献の翻訳・解釈を中心に進めた。ヘレーネ・シュテッカーについては先行研究の整理を行い、その優生思想に関して中間発表をWorking Paper No.20にまとめた。シュテッカーのラディカル・フェミニズムはニーチェ哲学と優生学に結合した思想であったが、優生思想の支持者内部の差異を厳密に検討する必要性、及びシュテッカー自身の諸論文を緻密に分析する必要性を改めて確認した。穏健派の理論家マリアンネ・ヴェーバーの著作の翻訳も続行して行い、子どもへの影響重視の立場を確認した。マリアンネのDas Problem der Ehescheidungの翻訳を雑誌に掲載した。 本研究に関わる総合的な研究成果の一端として、20世紀初頭の女性たちの、「女性文化」の概念による国際的平和運動の連関を、「女性たちのユートピア-ケイ・ギルマン・シュテッカー・ヴェーバー・らいてう-」と題して本学女性文化研究所研究会にて口頭発表し(2005/10/27)、『ニューズ・レターNo.47』に要約を掲載した。
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Research Products
(2 results)