2004 Fiscal Year Annual Research Report
自由の普遍性と正義の超越性-トマス・アクィナスにおける人間論の展望-
Project/Area Number |
16520031
|
Research Institution | Kagoshima Immaculate Heart College |
Principal Investigator |
佐々木 亘 鹿児島純心女子短期大学, 生活学科, 教授 (40211940)
|
Keywords | 究極目的 / 共同善 / 共同体論 / 所有権論 / 他者 / 人間の超越性 / 自由の普遍性 / 正義の超越性 |
Research Abstract |
本研究は、「共同善への運動」という観点からトマスの共同体論が有する現代的な意義を明らかにし、最終的には出版という仕方での提示を目的としている。この研究の前提となるのは、人間存在そのものの「超越性」である。この超越性から出発しなければ、「自由」と「正義」の関係や「個」と「共同体」の関係を、真に調和的な仕方で捉えることは不可能であると思われる。『トマス・アクィナスの人間論-個としての人間の超越性-』という著書の出版には多くの時間を必要としたが、この著作が「共同体論研究」を可能にすると考えている。 本研究の直接的な成果としては、二つの学会発表と四本の研究論文を挙げられる。まず、経済社会学会での「正義の動的構造-トマス・アクィナスにおける公共性への展望-」では、人間的行為における能動と受動の構造のもとに、正義のはたらきを分析した。現在、この発表をもとにした論文を、学会に査読付論文として投稿している。また、関西哲学会でも所有権と共同善の関係を哲学的に示した。一方、論文では、所有権論に関する査読付論文が『経済社会学会年報』に掲載された。「所有」とは、個と共同体の関係が最も現実的な仕方で問われる行為であり、本研究の中心課題である。また、「個」は「自己」と「他者」に区別されることから、「他者とは何か」では、他者の意味を哲学的に解明しようとした。さらに、宗教・宣教学、および美学の立場から、それぞれ共同体の意味を探ろうとしたものが、他の二本の論文である。 山田晶京都大学名誉教授、野尻武敏神戸大学名誉教授、足立正樹神戸大学教授を中心とした研究打ち合せと、ノート型パソコンを活用した文献調査が本研究の骨格をなしている。研究計画は順調に実行されており、いよいよ共同体論の本論に入ろうとしている。
|
Research Products
(5 results)