2005 Fiscal Year Annual Research Report
《玉歴鈔伝》について-<訳注>及び<資料集成>作成を主たる目的として-
Project/Area Number |
16520035
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
川崎 ミチコ 東洋大学, 文学部, 助教授 (30186085)
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Keywords | 玉歴鈔伝 / 地獄 / 十王審判 / 善書(勧善書) / 地蔵菩薩 / 十王経 / 勧善懲悪 / 現世利益 |
Research Abstract |
本年度は、中国及び台湾台北に於いて、資料蒐集・その他調査を行ない、42種類余りの《玉歴鈔伝》の本を入手した。中国では上海・寧波・南京・香港・北京の5都市を訪れ、主な寺院及び道観等で《玉歴鈔伝》本の流布の有無・流布している《玉歴鈔伝》本の元本の種類・寺院に居る人々に於ける《玉歴鈔伝》本に対する認知の度合等々についても出来得る限り聞き取りを行なった。又、台北では、市内及び近県に数多く存在する寺院宮観を訪れ、同様に資料蒐集及び聞き取りを行なった。台北・香港は別格としても、他4都市でも訪れたほとんどの場所において、古本ではない現行の《玉歴鈔伝》本(実際に現在流布しているものは、《玉歴(暦)宝鈔》・《人生宝鑑》と称するものが多いが配置されており、訪問の際には無くともその存在は認知されていた。南京霊谷寺で入手した《玉暦宝鈔》には他本とは異なる点が多くあり、特に2003年冬、陳明果氏が記した前言では、現在の中国に於ける犯罪の増加・凶悪化・残忍化・犯罪者の若年令化・組織化・知能化等々と人心の道徳観念の欠落や<善有善報・悪有悪報>という因果応報思想の欠乏の間には相間関係があるとし、法律制度確立や警察力増強といった外的要因を整備するだけでなく、人心教化つまり善悪因果応報観念の弘揚こそが何よりも必要であるとしている。更に最近10数年間の実例を挙げ、勧善懲悪因果応報を強調し、《玉暦宝鈔》の施印・施恵・流通・伝播の必要性をも説いている。現代中国に於いてさえ《玉歴鈔伝》本のような勧善書の必要性を表立って明言するようになったという事実を知ったことも大きな収穫の一つであった。17年度蒐集の《玉歴鈔伝》本リストは出来上がったが、前年度からの継続作業である国内の大学・諸研究機関・博物館等の《玉歴鈔伝》本及び十王経関係資料の所蔵状況リスト作成は未だ出来上がらず、再度継続ということにせざるを得ない。
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Research Products
(2 results)