2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520036
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
山田 利明 東洋大学, 文学部, 教授 (30104897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹下 悦子 二松学舎大学, 文学部, 教授 (40181614)
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Keywords | 信仰 / 歌謡 / 南方中国 / 『楚辞』 / 楚文化 / 離騒篇 / 越方 |
Research Abstract |
南方中国における古代祭祀儀礼の基礎的文献は『楚辞』である。この文献の持つ宗教性・信仰性については、従来より指摘されてきた。今回の研究では、かつての楚だけではなく、長江流域にまたがる荊楚呉越の地に展開された信仰と、『楚辞』特にその「離騒篇」との関連を考える基礎的な作業を主とした。現地調査を含む今回の研究成果は、いわゆる楚文化とはいかなる文化であるのか、そしてその文化は、北方の文化とどのように異なるのかを、例えば『詩経』との比較により、信仰の実態を明らかにし相違点を論じた。そのための基礎的資料として、『楚辞』離騒篇や九歌篇の正確な翻訳を行い、歴代の注釈の特徴など明らかにし、さらに古代のいわゆる「越方」との関係についても考察を試みた。 『楚辞』離騒篇・九歌篇・招魂篇は、古代楚国の祭祀の状況を伝える文献であり、特に離騒篇・九歌篇の内容は、いわゆる招魂儀礼の方法とも関わる。従来の研究では、古代の招魂法のみに注意が向けられてきたが、この研究では、そうした古代の招魂・招神の方法と、「越方」や巫祝の呪術、あるいは道教の霊宝法との関連も視野に入れた。殊に霊宝法は『詩経』の「霊保」の南方音、という説に従えば、北方も南方もほぼ同じ霊魂観を基盤にしていたことが分かる。勿論、その発展形態はそれぞれに異なるが、尸にもとづく信仰のあり方は、南北ほぼ同じであったといえよう。九歌篇の内容もまた、『詩経』頌部と同じように、死者や神への頌詩であり、招魂・招神の儀礼と深く関わるといえる。いずれも、『楚辞』と『詩経』の祭祀がきわめて類似した方法を基盤にしていたことを明らかにするものである。 宗教儀礼のもつ音楽性については、古代以後の儀礼においても継承されてきたが、招魂・招神の方法としての頌詩の歌詠は伝えられない。ただし、古代祭祀と音楽性は、湖北省博物館所蔵の戦国期の諸楽器によっても証される。
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Research Products
(6 results)