2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520039
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
織田 顕祐 大谷大学, 文学部, 助教授 (70247766)
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Keywords | 大乗仏教 / 大月支国 / 仏駄跋陀羅 / 東西交流 |
Research Abstract |
本研究の目的は、仏教の中国伝来を中央アジアを介した東西交流の中に置いて見たときにどのようなことが見えてくるか、その実態に迫る事である。今年度は昨年に引き続き、『高僧伝』等の伝記資料の精査と、必要資料の収集に専念した。 まず、伝記資料の精査に関して言えば、研究代表者は『高僧伝索引』等を手がかりとして、本研究に関連すると思われる語彙に見当を付け、その語彙を網羅的に選び出し、当該の箇所の文脈をできる限り広い範囲で検討するという方法によって、作業を進めた。選び出した語彙は、当該文献を整理するうえで必要な記事(当該文献が対象とする人名、その人の出身地、時代、特記事項など)を付してデータベース化している。こうした地道な作業によって、これまで予想もしなかった交流の軌跡が浮き彫りになりつつある。たとえば『60巻華厳経』を翻訳した仏駄跋陀羅は、カシミールの出身であるが、3年かかって交趾(現在のベトナムのハノイ)に到り、そこから船に乗り換えて山東へついたと記されている。こうした記述がどのような意味を持つのか、他の用例等を参照にしない限り不明であるが、タクラマカン砂漠をはさんだ、天山南路(西域南道、西域北道)とその周辺のみを東西交流の要路とする概念では理解できない行動であると言う事ができる。 こうした例は、全体からみれば一つの点に過ぎないような事であろう。従って、このような点を可能な限り集めて線とし、それを拡大して面に近づけていく事が当面の課題である。 必要資料の収集に関しては、本研究の中心を為す「大月支国」関係の文献を集中的に集めた。大月支国は仏教のみならず、ゾロアスター教、キリスト教などとも関係が深かったようなので、広い視野からの検討が必要であることが明らかとなった。
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