2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520046
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
渡辺 章悟 東洋大学, 文学部, 教授 (50277349)
|
Keywords | 金剛般若経 / 漢訳の方法 / スコイエン写本 / 達摩笈多 |
Research Abstract |
本研究は追加採択で研究の開始が遅れたため、本来の予定の70%程度の計画しか実践できなかった。研究の初年度ということで、写本文献の収集整理と関連研究のBibliographyの作成に力を入れた。 写本コピーの収集に関しては、必ずしも大きな成果を上げることはできなかったが、平成17年1月にロンドンの大英図書館に出張し、サンスクリット写本とチベット語訳写本を調査確認することができ、今後の研究に大きな成果を上げることができた。また、写本の所在調査に関しても比較的充実したリストを作成することができた。 研究成果の発表に関しては、7月31日には北海道大学で北海道印度哲学仏教学会の第20回学術大会が開催され、そこで「笈多訳『金剛能断般若』の真偽」と題して研究発表を行った。その内容は「仏典はどのように漢訳されたのか-笈多訳『金剛能断般若波羅蜜経』を巡って-」(『東洋学論叢』第30巻)にて公刊した。 この論文は、原典としてのサンスクリット仏典がどのように漢訳されてゆくのかを達摩笈多訳の『金剛能断般若波羅蜜経』を例にとって解明したものであり、すでに失われたサンスクリット原文の一系統を漢訳から再生させるという試みでもある。実はここで取り上げた笈多訳は金剛般若経のサンスクリット原文を漢訳にする過程のまま残された未完成な翻訳で、文法的にも語彙としてもいまだ漢文として完成されていない。しかし、その翻訳は非常に規則的に為されていて、笈多の漢訳からサンスクリット原本を再生することが可能な資料である。本研究はこの操作によって、現存する他系統のサンスクリット写本と比較したものである。この研究は、仏典の翻訳という異文化コミュニケーションの状況を明らかにするという特徴をもつものである。
|
Research Products
(1 results)