2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520048
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
安藤 充 愛知学院大学, 文学部, 教授 (90183152)
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Keywords | Wrhaspatitattwa / 古ジャワ語 / シヴァ教 / パーシュパタ |
Research Abstract |
研究初年度として、古ジャワ語によるシヴァ教綱要書"Wrhaspatitattwa"の読解と和訳をまず進めた。現行刊本におけるテキストの読みが不確かで、本来のテキスト伝承が不明な箇所も少なくなかった。そこで、従来参照されていなかった当該テキストの写本資料調査もあわせておこなった。 テキスト全編のコンピュータ入力とデータベース化作業をおこない、訳注研究に関しては前半部分までは注も含めてコンピュータ入力を済ませることができたが、本年度中に成果を公刊するには到らなかった。次年度上半期までには、少なくとも前半部の訳注研究を発表する予定である。 "Wrhaspatitattwa"研究の最大の謎の一つは、引用される74のサンスクリット詩節の典拠が一つも明らかにされていない点にある。本年度は、テキスト読解を進める一方、他の古ジャワ語文献およびインド古典文献の中から"Wrhaspatitattwa"の典拠となったテキストを探り当てることを試みた。中でも、古ジャワ世界のシヴァ教に明らかな影響を及ぼしていると目されるパーシュパタ派シヴァ教テキストに焦点を当て、思想的な影響関係を解明する手がかりを得ることを目指して"Wrhaspatitattwa"との比較対照を進めた。しかし本年度中には、原典テキストを「発見」するには至らなかった。古ジャワ世界におけるサンスクリット文献制作については未だほとんど研究がなされていないが、その可能性についても今後の研究で視野に入れる必要がある。 一例を挙げれば、サンスクリット第4詩節は、いわゆる「群盲撫象」の比喩であるが、インドの古典宗教文学に類例は数多いにもかかわらず、一致ないし近似する表現の詩句をもつテキストが未だ見出されていない。インドから古ジャワ世界への文化伝承の潮流および古ジャワ世界におけるテキスト伝播のプロセスを考慮に入れて、テキスト成立の背景を考察しなければならない。
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