2006 Fiscal Year Annual Research Report
後期イスラーム神秘主義の思想と運動-スンナ派とシーア派の比較的検討
Project/Area Number |
16520054
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東長 靖 京都大学, 大学院アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教授 (70217462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鎌田 繁 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70152840)
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Keywords | イブン・アラビー学派 / ボスネヴィー / モッラー・サドラー / スーフィズム / スンナ派 / シーア派 / 神秘主義 / イスラーム思想 |
Research Abstract |
本研究は、後期イスラーム神秘主義を、スンナ派とシーア派、思想と運動という二つの参照軸を用いつつ検討することを課題とする。そのため、スンナ派のボスネヴィー、シーア派のモッラー・サドラーという共に17世紀に生きた二人の思想家に焦点をあて、彼らの思想と運動を検討した。 東長は、第2回世界中東学会大会(ヨルダン・アンマン、2006年6月)において、パネル"The Logic of Succession around Sufis and Saints"を組織し、司会をつとめるとともに基調報告を行い、存在一性論という思想とタリーカの運動との間をどう考えるべきかという問題提起を行った。このパネルを元とした英語による特集は、既に刊行されたOrient42号及び2007年度刊行予定の『アジア・アフリカ地域研究』に掲載される。 鎌田は、モッラー・サドラーに関する研究をさらに進展させ、「幸福と哲学者の営み--モッラー・サドラーの実体運動説の意味--」と題する論文を発表するとともに、スンナ派・シーア派という図式を超えたより大きな視点から「イブン・ハズムとユダヤ教」を発表して、イスラームと他宗教との関係を論じた。 共通討議により、同時代に生きた二人の思想家には、存在一性論学派という同一の学的系統に属するという共通点がありながら、数々の相違点があることも浮き彫りになってきた。それは、スンナ派・シーア派という学問伝統に依拠すると同時に、イスラーム神秘主義の思想と教団の運動がともに主流にあったオスマン帝国(ボスネヴィー)と、思想のみが主流で、教団の運動が弾圧されたサファヴィー朝(モッラー・サドラー)という活躍の場の違いが大きく影響しているであろうことが明らかとなった。 なお、東長は2007年11月にサラエボで開催される国際会議"The Place and Role of Dervish Orders in Bosnia-Herzegovina"に招待され、本研究の成果を発表する予定である。
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Research Products
(6 results)