2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520073
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
佐々木 健一 日本大学, 文理学部, 教授 (80011328)
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Keywords | 美学 / 基礎概念 / 新しさ / 独創性 / 新しさ / リズム / 物語 |
Research Abstract |
本年度特に新しく研究した概念のなかから、次の3者について、その概略を報告する。 「新しさ/独創性」--新しさが知覚印象の問題であるのに対して、独創性はその新しさが特別の能力(天才)に由来すると見る価値判断である。特に藝術においては、新しさを求める傾向は古今東西にその存在が認められるが、独創性は西洋近代の概念である。文化には新しさをよしとするものだけでなく、古さを尊ぶものもある。大航海時代とともに新しさへの傾斜が顕著となり、やがて独創性の概念が生み出された。しかし、モデルニテの概念とともに、単なる新しさと流行、さらにセンセーションを積極的に強調する思想が台頭する。今日では、独創性が古いものにも認められるという点に概念史の注目すべきポイントがある。 「リズム」--動的な現象における秩序ある躍動感と定義できる。その語源と概念の形成過程を検討し、古代に顕著なリズムの情感的・倫理的効果の説を考えた。近代的なリズム概念が形成されるためには、韻律(音楽では拍子に相当)と区別されることが重要で、それは強弱アクセントの近代語とともに開かれた地平である。そのリズムは力動的な生気づけの原理であり、音楽のなかの音楽とまで見られるようになる。その挙句、音楽においては、20世紀においてリズムは解体し、その重要性はダンスやスポーツのような身体運動の領域において強調されるようになる。 「物語」--この名で呼ばれるものには、語る行為、それを綴ったテクスト、それの表わしている(基本的には)虚構的な対象の三者があり、narrativeの語はこれらを包括している。その最も基本的な特徴は、2つの出来事を因果関係において結びつけることで、解釈もしくは構成の契機をなす。20世紀後半において物語が注目され始めたのは、構造主義や記号論、解釈学的な思想的動向と相関している。その大きな成果が、プロップやスリオの行った機能分析で、物語の型が一般的な図式で捉えられるようになった。また、物語と近しい歴史を物語りとして見る見方も重要である。
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Research Products
(3 results)