2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520073
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
佐々木 健一 日本大学, 文理学部, 教授 (80011328)
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Keywords | 美学 / 基礎概念 / 優美 / エロチック / 崇高 |
Research Abstract |
本年度特に集中して研究し、原稿化することに力を注いだ概念は次の2つである。 「優美/エロチック」「優美」は近代においては、特に動きの美と見なされ、そこで舞踊と結びつけて考えられてきた。更にシラーは、それをひとの振る舞いにおいて解釈した。他方エロチックなものは非美的なものの代表格として、美学から排除されることが多い。しかし、シラーが参照したホメロスの「アプロディテの帯」が示すように、優美は本来生命の美であり、エロチックなものと重なり合う。プラトンは既に、エロスをひとの創造的意欲と見なしていた。他方、優美は、古代において、霊感的な魅力として捉えられた。このような即興性につながる生動感としての優美は、近世まで伝承された。近代以降の理論のなかで注目されるのはシラーとヴァレリーで、優美の力の側面を捉えている。他方、フロイトは生の欲動を捉えてプラトンを再発見し、バタイユは動物的なものから人間的なものが分立するプロセスにおける本質的な契機としてエロティシズムを捉えた。 「崇高」崇高は伝ロンギノスのレトリックの著作を原点とし、天才的な霊感のもたらす効果と考えられた。近代世界に蘇ったこの概念は、基本的な美的範疇の1つとなった。バークは特に詩にみられる圧倒的な迫力に注目し、カントはわれわれの尺度やカを超える絶大なものの効果としてこれを捉えた。そこに含意されていた人間的=道徳的なものの契機はシラーによって論じられた。この概念は、20世紀後半において、別の角度から注目され、現代思想の主要概念の1つとなった。その代表者はアドルノとリオタールだが、その特徴は崇高を脱感性化し、これをアヴァンギャルドに固有の批判的な仕事をさす名称としたことである。すなわち、脅威を受けた精神がそれを乗り越えようとする、その精神の体勢に、伝統的な崇高概念と符合するものを、かれらは見ている。
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Research Products
(6 results)
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[Book] レトリック事典2006
Author(s)
佐藤信夫, 佐々木健一, 松尾大
Total Pages
816
Publisher
大修館書店
Description
「研究成果報告書概要(和文)」より
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