2005 Fiscal Year Annual Research Report
承久の乱後における王権思想の変容と展開に関する研究
Project/Area Number |
16520099
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
弓削 繁 岐阜大学, 教育学部, 教授 (10127798)
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Keywords | 中世国文学 / 王権思想 / 承久の乱 / 愚管抄 / 徒然草 / 八幡愚童訓 / 楽書 |
Research Abstract |
本研究は、拙著『六代勝事記の成立と展開』(平成15年、風間書房刊)の成果を承け、承久の乱後に明確になってくる、イデアとしての帝王と現実の天皇とを峻別する二元的な王権思想について、その変容と展開の姿を中世文学史の中に見定めようとするものであるが、三年計画の二年目に当たる本年度は、次のような研究を行った。 1、承久の乱の直前の思想状況を見定めておくことは本研究にとって不可欠の課題であるところから、『愚管抄』に注目してその思想を著者慈円のいくつかの願文を以て検討した。その結果、問題の二元的な王権思想の基盤をなす思想の一端を確認することが出来た。具体的な知見は近く論文として公にする。 2、前年度、『徒然草』の第226段について、この段は従来のように『平家物語』の作者、成立説としてではなく、兼好の歴史認識(公武認識)を示すものとして理解されるべきことを明らかにしたが、本年度はこれを伝統的な音曲論との関わりにおいて捕捉し、論文化した(平成18年7月、和泉書院から刊行予定の『中世文学の展望台』に収載)。 3、13世紀末の蒙古の襲来は、国家の危機として、国家、王権への認識を新たにさせたが、そのことを明らかにするための基礎作業の一つとして、『八幡宮愚童訓』の未紹介資料である岩国徴古館蔵本の調査を行った。次年度の紀要に解題を付して翻刻する予定である。
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