2006 Fiscal Year Annual Research Report
「奇談」書を手がかりとする近世中期上方仮名読物史の構築
Project/Area Number |
16520103
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
飯倉 洋一 大阪大学, 文学研究科, 教授 (40176037)
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Keywords | 奇談 / 上方 / 近世小説 / 仮名読物 / 寓言 / 大江文坡 / 浮世草子 / 談義本 |
Research Abstract |
平成16年度より進めてきた、『享保以来大阪出版書籍目録』(『大阪本屋仲間記録』所載の基本データ入力は専門知識を有するアルバイト学生を雇用して安永期まで入力を終え、これを点検した。平成17年度の研究で大坂の書肆吉文字屋市兵衛が上方の「奇談」書の流れを見ていく上で、極めて重要な役割を果たしていることが明らかになったので、作成したデータの中から、吉文字屋が関わった刊行物を抜粋し、その年表を研究成果報告書に掲載した。大学院生を指導し、明和九年の書籍目録に登載されていないものの、「奇談」書として注目すべき書である『新斎夜語』について諸本調査解題、翻刻本文を作成させ、研究成果報告書に掲載した。 これらの研究を通して、「奇談」と「寓言」の関係を追求すべきであることがはっきりしてきたが、上方「奇談」史において欠かせない大江文坡の寓言論をうかがう資料として貴重な『荘子絵抄』を調査・研究した。その解説と影印を研究成果報告書に掲載した。「奇談」書に多く見られる「寓言」的方法の観点から文学史を構想する仮説的視点が見えてきたので、その立場から「怪異と寓言-浮世草子・談義本・初期読本-」という論文を執筆、寄稿を求められた『西鶴と浮世草子研究』第2号(平成19年5月刊行予定)に投稿した。 本研究の前身ともいえる平成11年度〜平成13年度科学研究費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書『明和九年刊書籍目録所載「奇談」書の研究』(課題番号11610446)刊行の後、諸氏に受けた教示と、学界における研究の進展および自らの新たな知見を併せて、該書の内容を改め、改訂版として研究成果報告書に掲載した。 3年に渉る研究の最終年度に至って、「奇談」書を手がかりとする近世中期上方仮名読物史の基礎的構築が概ねなされたと考えている。
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Research Products
(1 results)