2004 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代の三都(江戸・京都・大阪)出版法制の比較研究
Project/Area Number |
16520107
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山本 秀樹 岡山大学, 大学院・文化科学研究科, 助教授 (60252409)
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Keywords | 江戸時代の出版制度 / 本屋仲間 / 江戸時代の出版法制 / 享保の改革 / 江戸時代前期の出版 |
Research Abstract |
本研究において、今年度行っている主な作業は、以下の四つである。1.三都個別の編年体町触集成である『江戸町触集成』・『京都町触集成』・『大阪市史』「御触及び口達」から、出版関係町触をピックアップし、コンピュータ入力する。2.本研究課題と関連する研究文献及び資料文献を収集し、その内容を分析する。3.出張調査によって、法制史料の収集・発掘に努める。4.『大阪本屋仲間記録』『京都本屋仲間記録』の内容を点検し、出版関係町触の実際の運用状況を把握すべく努める。 今年度は研究計画初年度に当たり資料収集の段階にあり、本研究課題に関わる作業は基本的に全て次年度継続作業となっているため、確定的なことはいまだ述べられないが、従来の認識の問題点を指摘しておくと以下のごとくになろう。 従来の理解は、江戸という都市に固有の町触を、京都・大阪にも共通のものとして、京都・大阪の出版状況を説明しようとして来たために、諸所に誤りを含む可能性が大である。また、京都・大阪の町触の内容に関して、充分に認識されていなかったことも問題である。 出版に関する町触の発布は、おそらくは、江戸時代前期においては、各町奉行の専管事項であったと思われる。そのため、町触の表現も三都で異なっているし、時代の推移と共に出版制度自体も異なりを見せる。出版制度として最も異なっていたのは、京都においては出版物の検閲制度が布かれたことである。江戸・大阪においては、享保改革期に、町触によって本屋仲間の組織化が命令されると共に、自主検閲制度が開始されるまで、そのような形跡はない。 江戸時代の出版にとって、享保改革期は、初めて三都に共通の制度が布かれた画期的な時代であった。その重要な史的意義も、従来は看過されていたと言わざるを得ない。
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