2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川中子 義勝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60145274)
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Keywords | 宗教 / 啓蒙 / 伝統 / 予型 / 形象 / トポス / 賛美歌 / ハーマン |
Research Abstract |
本年度はまず、私のこれまでの研究で積み重ねてきた、ハーマンを初めとする批評文学の伝統における修辞的要素の検討を、将来の「聖書詩学」の『系譜的叙述のためにより組織化し、より洗練された形で纏めることに努めた。ドイツ近代文学作品をはじめとするレファレンス文献を購入して、ある形象が予型的に用いられる場合を網羅的に提示に出来るようにした。その成果の一部を2004年6月東京女子大で開催された日本シェリング学会シンポジウムで「ハーマンにおける神話」と題して発表した。 その一方で伝統を『保持・形成」する要素として修辞的形象が積極的役割を果たす、そのような事例を収集することに努めた。「予型論」などの歴史や伝統を積極的に打ち出す散文作品や抒情詩を広く対象とした。修辞的共同体における最も積極的な表現形式は宗教詩であるので、これに重点を置いた。日本ではあまり顧みられていない宗教詩人たちにも目を配り、これまで日本のドイツ文学研究がほとんど取り扱わなかった人々の資料を収集し、彼らの用いた宗教的形象や修辞を分析した。出張調査によって、ヨーロッパの図書館、文書館を訪れて資料を収集・参照に当たることが不可欠であるが、今年度は、夏期休暇中にレーゲンスブルク、バイエルン国立図書館(ミュンヘン)などにて資料収集を行った。 並行して、概念としての「予型typos」の意義を深めることにも努めた。解釈学的な伝統に於ける「予型論」と「アレゴリー」の概念的峻別は大変重要な前提となるので、こうした問題を神学や修辞学の文献に当たって整理した。その過程で、終末論や黙示文学的形象が歴史的に近代に至るまで重要な意味をもつことを確認した。以降はその主題を核に据えて、ドイツやヨーロッパ文学における「予型論的」な形象を歴史学的に整理していくという方針を定めた。また、この問題について、さらに将来の成果発表方法について、出張調査の際に、レーゲンスブルグ大学のガイェック教授と協議を行った。
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Research Products
(7 results)