2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520133
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川中子 義勝 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60145274)
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Keywords | 宗教 / 啓蒙 / 伝統 / 予型 / 形象 / トポス / 賛美歌 / ハーマン |
Research Abstract |
本年度は、「予型論」をドイツ近代文学という歴史のスパンの中で具体的に跡づけ、それを修辞の伝統のうちに系譜的に叙述するという研究の目的にそって、以下の研究を行った。まず平成16年度の研究をひきつぎ、宗教や伝統が培ってきたトポスとしての予型typosや比喩形象figuraの果たす役割を検証し、「予型論」という文体形式の歴史的展開を跡づけた。先年度から続けている資料収集を重ねつつその分析を行った。資料収集の範囲を拡大すると共に、分析の精度を深めた。その際、以下の点を特に考慮をした。 1.修辞的伝統の系譜的研究が単なる懐古的な叙述にとどまることのないよう、現代の表現の問題に関するその積極的な意義付けを探った。とくに、どの世代の生にも共通する主題を提示するように努めた。その際に、希望の形象としての「予型論」を中心の主題としたが、その様々な展開の中でも特に、死生観に関わる重要な比喩形象を取り上げ、これを系譜的に跡づけ、伝統の批判や継承の文脈においてそれらの果たしてきた役割を明示しようとした。 2.敬虔主義や覚醒運動など、近代各時代の人々が死生観の表明する際の比喩の伝統などを、文体の側面から見直した。その際に、そうした伝統形成の背景を培ってきた宗教改革から19世紀に至る範囲の神学論争などもあわせて検討した。賛美歌集に加えて説教集、祈祷書など、無名の人々の日常を規定している修辞的伝統も検証し、「予型論」を文学共同体の修辞的伝統全体のなかに跡づける作業を行った。 3.詩人と作品の全体像を獲得すべく、その当時の作品集などを参照するための出張調査を昨年にひきつづき行った。今年度は、夏期休暇中に主としてレーゲンスブルク大学の図書館において資料収集にあたった。またバイエルン国立図書館(ミュンヘン)、ミュンヘン大学図書館においても、讃美歌学関係の資料を参照した。また時期を併せて、レーゲンスブルク大学のガィエック教授と研究の内容について意見交換を行った。
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Research Products
(6 results)