2006 Fiscal Year Annual Research Report
ギリシア・ローマ文学における他学像の変容に関する研究
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16520143
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小川 正廣 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (40127064)
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Keywords | 他者 / 奴隷 / 女性 / 非市民 / 異民族 / ローマ / セネカ / ストア哲学 |
Research Abstract |
今年度はローマ時代の古典作品および現地調査のデータにもとづいて、他者像の転換について考察した。 1.共和政時代のプラウトウスとテレンティウスの喜劇には、奴隷、遊女、内妻、非市民の外国人など、男性市民に対して他者と位置づけられる人物が中心的役割を担った作品が多く、それらの作品を中心に、、奴隷解放の増加と女性の権利の拡大を背景とした奴隷像と女性像の変化について分析した。 2.帝政期初期の詩人ホラティウスの『書簡詩』を中心に、成熟したローマ社会における多様な他者像を探った。 3.帝政期初期の文人セネカの倫理的著作『寛恕について』と『恩恵について』の翻訳と詳細な注解を作成し、それらの著作の内容を分析しながら、ストア哲学にもとづく奴隷や下層民、異民族に対する見方の転換について考察した。 4.ローマ人の多民族社会の拡大を地理的・歴史的に検証するため、当時のローマ属州ヒスパニア(現スペイン・ポルトガル)の古代遺跡・考古学博物館等において現地調査を行ない、ローマ人の異民族統治の実態に関する多数の映像および文字資料を収集して、それらにもとづいて他者像の転換について考察した。 5.ローマ的な他者(異民族)統治の在り方がその後歴史的にどのように受け継がれたかを明らかにするため、台湾におけるスベイン人による原住民支配の実情について現地調査を行なった。
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Research Products
(3 results)