2007 Fiscal Year Annual Research Report
ギリシア・ローマ文学における他者像の変容に関する研究
Project/Area Number |
16520143
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小川 正廣 Nagoya University, 文学研究科, 教授 (40127064)
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Keywords | 西洋古典 / ギリシア / ローマ / 他者 / 異民族 / 奴隷 / 神 / ウェルギリウス |
Research Abstract |
(1)ギリシア・ローマの古典文化と他者的地域としての地中海周辺地方、とりわけオリエントと北アフリカの異民族地域は、とくにローマ社会にとって地中海世界統合の政治的・軍事的な要であると同時に、社会的人材、奴隷、自然資源・農産資源などの重要な供給地でもあった。そのようなさまざまな価値を有する東方およびアフリカの他者的世界に対して、西方の長い古典文化の伝統を担うローマ社会は具体的にはたしてどのように接し、異民族文化・社会習慣の受容・交流・排斥などを展開したのか。今年度は、本研究課題の検討を集約するに際して重要な意義を帯びてきたこの問題に関して研究・調査を行なった。具体的には、ローマ共和政末期のサッルスティウスの歴史文学『ユグルタ戦記』において、ローマ人と北アフリカ・ヌミディア地方の異民族ベルベル人との政治的・文化的関係がどのように描かれているかを考察した。また同時に、文学的文献に現われたそうしたローマ人の異民族観が、帝政初期以降の北アフリカにおけるローマの進出と支配の歴史的プロセスにどう反映しているのかという点について、かつてローマの属領となったベルベル人の居住地域マウレタニア西部(現モロッコ)の遺跡・博物館等を現地調査するとともに、さらに古代マウレタニアの牧畜文化を現代にまで継承するベルベル人文化についても調査した。 (2)ローマの詩人ウェルギリウスの叙事詩『アエネイス』において神の概念も含めた他者像を分析し、そのローマ的な他者観念がダンテをはじめとする後世の西洋文学にどのような影響を与えたかを考究した。
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Research Products
(3 results)