2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520145
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 宏幸 京都大学, 文学研究科, 教授 (30188049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中務 哲郎 京都大学, 文学研究科, 教授 (50093282)
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Keywords | 書簡文学 / 古典古代 / ギリシア文学 / ラテン文学 / アリスタイネトス『愛の手紙』 / キケロー『書簡集』 / ホラーティウス『書簡詩』 / セネカ『倫理書簡集』 |
Research Abstract |
ギリシアの書簡文学には、書簡の形式を用いた哲学・倫理学あるいは自伝といった真の著作がある一方で、まったく虚構の書簡が存在した。それらは、(1)独裁者パラリス、哲学者ソクラテスとその弟子たち、とりわけプラトン、医師ヒポクラテス、悲劇詩人エウリピデス、等の名に帰せられるまったくの偽文書、(2)漁師や農夫、遊女や市井の人、といった特定の社会階層の人々による手紙の体裁を採った創作文学、(3)伝説や先行文学の内容を書簡体で再話する翻案文学、等に分類することができる。本年度中務は(3)のタイプのアリスタイネトス「愛の手紙」(5世紀後半?)について調査し、それがヘレニズムの詩や新喜劇、歴史書など広い分野から素材を仰いでいることを明らかにした。 他方、高橋はローマの書簡文学のうち、とくにセネカ『倫理書簡集』を取り組みの中心に据えた。基礎的作業として進めた邦訳と注解は作品前半部について完了し、この五月に刊行予定である(裏面参照)。この過程でキケローの書簡やホラーティウス『書簡詩』などからの影響関係を検討する一方、作品理解の重要な視点として、差出人と名宛人の関係や書簡が発信される個別的状況など手紙のもつ本質的要素が作品の主題の提示に構造的かつ効果的に利用されていることが認められた。その一端は上記邦訳書の解説にも記したが、手紙本来の様式がローマの書簡文学において有機的に文学表現を担うという視点は本研究の出発点ともなったものであり、その重要性がこれまで緊密な構成の見出しにくかった『倫理書簡集』においても確認された意義は大きい。
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Research Products
(5 results)