2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520146
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前川 玲子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (30190292)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若島 正 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (10175060)
加藤 幹郎 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (60185874)
|
Keywords | アメリカ知識人 / 亡命知識人 / ウラジーミル・ナボコフ / 『ナボコフ=ウィルソン往復書簡集 / 亡命作家 / 映画学 / 赤狩り / 亡命者救済プログラム |
Research Abstract |
亡命知識人の政治・思想史的側面を担当する研究代表者の前川は、ニューヨークのロックフェラー文書館に赴き、亡命知識人救済プログラムに関する膨大な第一次資料の検索と分析を行った。特に亡命知識人の残した手紙、メモ、原稿などから、彼らのアメリカ移住後の思想的発展を分析する糸口を見出そうとした。同時に、1920年代から50年代にかけてのアメリカ知識人の研究を進め、ヨーロッパからの移住者の文化的知見を積極的に取り入れることでアメリカ文化の発展を構想したランドルフ・ポーンに関する論文や、ローゼンバーグ事件をユダヤ系移民の階層的・思想的分極化の過程の中で分析した論文をまとめた。 本研究の文学的側面の分析を行った若島は、ロシア人亡命作家ウラジーミル・ナボコフの研究を進め、ナボコフがアメリカに渡ってから文芸批評家エドマンド・ウィルソンと交わした約30年間にわたる往復書簡集の翻訳を刊行した。また、単著『乱視読者の新冒険』でも、その3分の1ほどをナボコフに関する論考に割いている。さらに、SF作家トマス・M・ディッシュの傑作集を編集した『アジアの岸辺』では、若島が翻訳したその表題作は、異境イスタンブールを訪れたアメリカ人がその土地に文字通り身体ごと同化していく過程を描いた幻想小説であることも付け加えておく。 さらに、本研究の文化史的側面を担当した加藤は、アメリカ知識人とアメリカ映画人との接恵としての「赤狩り」についての研究に取り組んだ。単著『「ブレードランナー」論序説 映画学特別講義』などを著し映画学の研究を進める一方で、『アメリカ-文学史・文化史の研究』所収の「アメリカにおける映画館の文化史」では、「ポグロム」(組織的ユダヤ人迫害)を逃れて19世紀末にアメリカに移住したユダヤ人とハリウッド映画誕生とを結びつける論を展開し、亡命者によるアメリカ大衆文化創造の過程を跡づけている。
|
Research Products
(6 results)