2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520146
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
前川 玲子 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (30190292)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若島 正 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (10175060)
加藤 幹郎 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (60185874)
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Keywords | 亡命知識人 / アメリカ知識人 / ウラジーミル・ナボコフ / ナボコフ=ウィルソン往復書簡集 / 亡命作家 / 映画学 / 赤狩り / 亡命者救済プログラム |
Research Abstract |
本研究では、1930年代から40年代にかけて、ヨーロッパのファシズムを逃れてアメリカに亡命した知識人たちの軌跡を文化・社会史的な観点から辿ってきた。平成17年度においては、昨年度のアメリカ亡命知識人に関する基礎的研究を踏まえて、個別の亡命知識人の思想的変容過程を実証的に明らかにする作業に着手した。同時に、二つの世界の狭間で生きる亡命者という存在が、どのような思想的、文化的、政治的変容をアメリカにもたらしたのかを多角的に検討しようとした。 研究代表者(前川)は、昨年度ロックフェラー文書館で行った、ロックフェラー財団の亡命知識人への資金援助の実態調査をもとに、社会科学者を中心とする亡命知識人の研究を深化させた。この成果を踏まえて、平成17年7月には、亡命知識人に関する国際ワークショップを行い、ロックフェラー文書館所長やインディアナ大学歴史学部教授を招いて活発な意見交換がなされた。こうした討議を経て、ナチズムと対峙するなかで学問的、政治的な自己アイデンティティを形成していった社会学者たちの実像に迫ることができた。 研究分担者(若島)は、亡命文学者の代表ともいえるウラジーミル・ナボコフの研究を一層深化させ、数多くのナボコフ作品の翻訳を完成させ、日本の読者にナボコフ文学を紹介し、かつその文学史的意義を提起するのに貢献した。もう一人の研究分担者(加藤)は、映画作家、監督として活躍した亡命者および彼らが製作した映像テキストの解析を進めるとともに、映画の観客としての移民たちの文化史的研究も行い、メディアの送り手と受け手という双方向的な視点から独自性のある研究をおしすすめた。 以上の三者の研究は、研究全体を統括した報告書としてまとめられたが、本報告書はアメリカ亡命知識人研究へのささやかな一助となるものと確信する。
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Research Products
(6 results)