2004 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半のドイツ文学と第一波女性運動-女性像の変遷をめぐって-
Project/Area Number |
16520149
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
赤木 登代 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (20324882)
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Keywords | ドイツ近代文学 / 19世紀 / 女性史 / 女性運動 / 家庭雑誌 / 市民層 / 結婚 / 家族 |
Research Abstract |
初年度の平成16年度は、主な研究対象である『あずまや』Die Gartenlaube 1853-1944(19世紀ドイツの市民層向け家庭雑誌)をマイクロフィッシュ版で入手することから始め、並行して19世紀ドイツ女性史、特に第一波女性運動に関する文献の収集にも着手した。そして、日本では入手困難な文献の閲覧・収集のために、ドイツのマールバッハにあるドイツ近代文学図書館を訪れた。 『あずまや』創刊当時、まだ統一以前のドイツ連邦では、3月革命の失敗により反動的な時代を迎えており、出版物に対する当局の検閲が非常に厳しかった。そのような時代を反映して、創刊者はその政治・社会的意図を隠し、あくまで読者の「娯楽」と「教訓」のみを目的とする「家庭雑誌」という体裁をとらざるをえなかった。しかし、その下には実は自由主義憲法に基づく国家統一、加えて、貴族の特権を撤廃し、市民層の台頭を目指す強い主張が隠されていたのだ。実際に掲載された詩や小説といった文学作品の中にも、物語の時代設定を過去にずらす、または舞台を外国に置く等の操作がなされてはいるものの、当時の政治や社会への要求や批判を読み取ることができる。つまり、民主主義を礼賛し、君主・貴族による支配を批判する、あるいは、貴族の堕落・退廃といった悪徳を弾劾し、市民の勤勉、堅実といった美徳が称揚されているのである。 ジェンダーという視点から雑誌を分析すると、市民階級が貴族と自らを区別し、階層としてのアイデンティティを確立する手段として、恋愛による「結婚」、安らぎの場としての「家族」が強調されている。
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