2005 Fiscal Year Annual Research Report
1980年代におけるカナダ英語表現演劇と仏語表現演劇の相互作用
Project/Area Number |
16520183
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小畑 精和 明治大学, 政治経済学部, 教授 (30191969)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 アヤ子 明治学院大学, 教養教育センター, 教授 (70139468)
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Keywords | カナダ演劇 / パフォーマンス / アイデンティティ |
Research Abstract |
M.トランブレーやM.M.ブーシャールやR.ルパージュらの仏語表現劇は英語に訳され、英語表現劇にも影響を与えているのに対して、英語表現劇は仏語に訳されておらず、ほとんど受容されていない。それは小説に関してもいえることであり、英語市場に比べて仏語市場が狭いからであるが、二言語社会であるカナダにおける文化的アンバランスを表す一つの事例として興味深い。 カナダでは、英系社会も仏系社会も60年代に急速に近代化が進む。また、この時代に差別的移民制限が撤廃され、70年代にはアジア系やアフリカ系など有色人種の移民が増大する。ケベック演劇はこうした変化をよく反映している。新しい社会に応じたアイデンティティ探求が60年代・70年代を通じて行なわれるが、80年代に入ると、ブーシャールの『孤児のミューズ』(1988)のようにルーツやアイデンティティを問題視する作品が現れる。第一作の『義姉妹』(1965)以来、等身大のケベック人の姿を描き出そうとしてきたトランブレーも、『五人のアルベルチーヌ』(1983)では、固定化されたアイデンティティではなく、女の一生という普遍的な価値を問い直している。英語表現演劇でもリー・マクドゥーガル『ハイ・ライフ』やトムソン・ハイウェー『ドライリップスなんてカプスケイシングに追っ払っちまえ』のような作品が出てくる。 また、ケベックでは演劇のみならず、サーカスのイメージを一新したシルク・ド・ソレーュや、モダン・ダンスのマリー・シュイナール・カンパニーのようなパフォーマンスも脚光を浴ぴている。ルパージュの作品や、デュルシネア・ラングフェルダー・カンパニーの『ヴィクトリア』も台詞を切り詰めて、ダンス、音楽、ハイテク技術など、様々な要素が演劇に盛り込まれている。こうした試みは言語の壁を越えた演劇表現の探求としてみることができるだろう。
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Research Products
(1 results)