2004 Fiscal Year Annual Research Report
モダニズム/エグゾティシズム研究--文学・芸術における〈外の思考〉の系譜
Project/Area Number |
16520189
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷 昌親 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90197517)
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Keywords | レーモン・ルーセル / ミシェル・レリス / ダダ・シュルレアリスム / 瀧口修造 |
Research Abstract |
研究の5つの柱を成す各項目について、本年度の実績を以下に記す。 a)レーモン・ルーセル研究-ルーセルにおけるイメージや視覚的なもののあり方について、仏語の論文にまとめた。この論文を収めた論文集は、近々、刊行される予定。さらに、ルーセルにおける分身のテーマについて、その独特の言語観との関係で論じる準備を進めている。 b)ミシェル・レリス研究-レリスが参加した1931年から33年にかけてのダカール・ジプチ調査団の民族学的な意義を明らかにするとともに、この調査に潜在的に含まれていたコロニアリズムの意識を、レリスが抱いていた違和感を手がかりに、浮き彫りにする作業を遂行中である。 c)ダダ・シュルレアリスム研究-上記b)はこの項目にも関係してくることは言うまでもない。一方、日本のシュルレアリスムにも眼を向け、瀧口修造におけるオブジェの問題について論じ、展覧会のカタログに論文を執筆した。なお、レリスの問題はもちろんのこと、この瀧口論も、広い意味でのエキゾティシズムを扱っている。 d)視覚芸術と無意識/身体-上記の瀧口論は、オブジェばかりでなく、写真の問題にもふれている。そこでの考察を土台にして、写真や映画が、まさにモダニズムとともに出現し、主体に対してエキゾティシズムの働きをもらたした点について、今後、さらに掘り下げていく予定である。 e)20世紀文化・社会・思想研究-上記b)の調査団についての研究は、昨年の論文において取り上げた1931年のパリ植民地博覧会の問題をある意味で引き継いでおり、ヨーロッパのモダニズムがエキゾティシズムと必然的に結びつき、ヨーロッパの外をめざしつつも、植民者的な世界観から抜けきれていないジレンマをとりあげている。このジレンマの構図は、ひとつの社会のなかでも生じうるものであり、都市におけるマージナルな存在の問題として捉えなおし、講演のなかで論じた。
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Research Products
(1 results)