2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代カナダ文学と植民地教育の関係-スリランカ、マレーシア、カリブ系移民作家の場合
Project/Area Number |
16520191
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤本 陽子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00238619)
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Keywords | カナダ文学 / 移民 / 植民地主義 / 教育 / ナショナリズム |
Research Abstract |
南アジアの作家については昨年までの調査結果を分析し、作品の読解やポストコロニアル理論と関連づけて論考をまとめることに力を入れた。その成果は、オンダーチェ作品における教育機関や教育内容あるいは学問領域のあり方への言及とその歴史的文脈を論じた英語論文、バダミの小説におけるインドとカナダの表象を扱った小論、セルヴァデュレイの歴史観に関する国際学会での口頭発表などである。 夏にはカナダに出張し、オースティン・クラーク、ディオンヌ・ブランド、シャニ・ムートゥーらカリブ系カナダ作家の作品と背景、一部のカリブ海地域とカナダにおける教育と植民地主義について資料収集と分析をさらに進めた。2006年以降、特に植民地主義と女性宣教師に関する新たな研究が発表されており、いくつかの作品を読み解く上で役に立った。これらの収穫をもとに、現在カリブ系作家に関する論文を執筆している。また、副産物として、マリーズ・コンデとの比較を含む日本文学の作品論を完成させた。 植民地主義教育をめぐる経験と現在に至る影響を、作家たちは小さな歴史の発掘という形で記録するにとどまらず、現在の各自の位置から読み替え、あるいは虚構化している。つまり自身の用いる方法や文学という分野の枠組みが、それ自体どう歴史的に条件づけられているかという問題を、多くの作家が過去の再構築の一部に批評的に組み込もうとしている。そこで、やや常套的ではあるが、知の伝統と脱植民地化の試みに関するポストコロニアル批評の言説や、ポストモダン、特にメタフィクションとポストコロニアル文学の接点についても文献を整理して確認を行っている。これらを生かして全体を一つの整合性ある研究としてどう統合させていくかが大きな課題である。
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Research Products
(2 results)