2005 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀前半のフランスにおける大衆演劇の受容と影響に関する研究
Project/Area Number |
16520197
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
大下 祥枝 沖縄国際大学, 総合文化学部, 教授 (40088745)
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Keywords | 19世紀前半の劇場 / ジャーナリズム / カリカチュア / フレデリック・ルメートル / 検閲制度と裁判 / 『パリの屑屋』と二月革命 |
Research Abstract |
ルイ=フィリップの七月王政の時代(1830年〜1848年)に制作・上演されたメロドラマ、及びメロドラマと似通った手法を含むドラマで扱われたテーマが、当時の社会の動きといかに連動しているかについて考察を進めた。本研究で取り上げたのは、V.デュカンジュ作『三十年間、またはある賭け事師の一生』、F.スーリエ作『職人』、『えにしだのある耕作地』、F.ピヤ作『パリの屑屋』、A.デンヌリ作『サン=トロペの奥方』、『マリ=ジャンヌ、または庶民の女』、A.アニセ=ブルジョワ作『カーニヴァルの謎』、『七つの大罪』、A.デュマ作『ネールの塔』、『リチャード・ダーリングトン』である。これらの作品では、多様な職業の内部事情、下層階級の人々の悲惨な生活、ブルジョワ階級の堕落した有様、拝金主義を生み出す土壌、社会に対する異議申し立て等が描かれている。例えば『パリの屑屋』の主人公のジャンは、二月革命を予告するような台詞を吐いており、当時の世相を様々な角度から映し出した舞台が、政治・社会について考える切っ掛けを観客に与えたことは否定できない。国政を担当する側としてはこのような現象は無視できず、検閲制度が強化されたのである。上演の禁止の措置と、上演再開を求めた裁判が繰り返し展開された時代でもあった。この点に関しては、『ロベール・マケール』、バルザック作『ヴォートラン』、さらに『パリの屑屋』を取り上げ、それぞれの作品で主役を演じたフレデリック・ルメートルと関係者がどのような法廷闘争を繰り広げたかを調査した。大衆演劇とカリカチュアとの結びつきについては、『ロベール・マケール』の主人公とドーミエが描いたロベール・マケール、及び『パリの屑屋』の主人公とトラヴィエスが描いた哲学者のような屑屋リアールの比較検討を試みた。
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Research Products
(1 results)