2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520202
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
伊藤 美重子 お茶の水女子大学, 文教育学部, 助教授 (40251871)
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Keywords | 類書 / 敦煌文書 |
Research Abstract |
前年度に引き続いて、王三慶編『敦煌類書』に収録される類書について、鈔本リストと先行研究リストを作成した。これまでの調査を踏まえて、『敦煌類書』収録の類書に関して、その種類や類書分類の方法、鈔本点数・鈔本番号などについて調査し「内陸アジア出土文物研究会」において報告した。 17年度の研究計画の主眼は個別の通俗類書の調査にあり、後代の通俗類書の淵源と推測される敦煌写本「雑抄」の調査及び本文の精読を試みた。「雑抄」は、歴史・地理・学術・生活知識・歳時などの一般常識、徳・忍などの道徳規範、文学作品・事物の由来などの学生としての基礎知識、格言・標語を集めたエチケット集から構成されていることがわかった。「雑抄」が当時の敦煌の学校で総合的内容をもつ教科書として用いられていたことを指摘し、その内容の広範さは、宋代の通俗類書である『事林広記』と重なるところもあり、このような類書が、学校という場から生活の場へ移されてゆく過程で、所謂「日用類書」に発展するのであろうと推測した。また、「雑抄」が問答体や「数目(数字による項目)」を採用して学習の効率化をはかっていること、「雑抄」の中で、学生の必読書としてあげる書物が、「日本国見在書目」にすべて著録されるものであることから、辺境である敦煌と日本との文化水準の類似性が見られることなどを指摘した。「雑抄」に関する調査については、「お茶の水女子大学中国文学会」において報告した。 更に、各類書に含まれる内容を比較するために、唐代の勅撰類書、故事類書、敦煌類書の三種について、各類書の部類と子目をデータベース化し「子目リスト」を作成した。この「子目リスト」は報告書の資料篇に掲載してある。
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