2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520211
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
根ヶ山 徹 山口大学, 人文学部, 教授 (20218267)
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Keywords | 中国近世戯曲演劇史 / 『牡丹亭還魂記』 / 湯顕祖 / 版本校合 / 明刻本 / 清刻本 / 曲譜 |
Research Abstract |
本年度は、新たに康煕間刊「呉呉山三婦合評本」・窪正間刊「芥子園刻本」・窪正間刊「才子牡丹亭」・乾隆50年(1785)刊「氷糸館刻本」といった清刻本、康煕33年(1694)刊の胡介祉『紐少雅格正牡丹亭』・乾隆57年(1792)刊の葉堂『牡丹亭全譜』・乾隆54年(1789)刊の馮起鳳『牡丹亭曲譜』といった曲譜の入力・校合を終えることができた。これにより、現存する『牡丹亭還魂記』の版本のうち、万暦45年(1617)石林居士刻本・明末朱元鎮校刻本・万暦間文林閣刻本・泰昌元年(1620)呉興関氏朱墨套印本・天啓5年(1625)梁台卿刻詞鍍双艶本・崇禎間蒲水斎校刻本・天啓間柳浪館刻本・天啓3年(1623)清暉閣批点本・崇禎間安雅堂刻本・崇禎9年(1636)独深居点定本・崇禎間毛氏汲古閣刻本・明末張弘毅著壇刻本・清初竹林堂輯刻本とあわせて、20種類の版本を校合することができた。その結果、以下の結論を得ることができた。 1.明代に公刊されたr牡丹亭還魂記』は、第1群(石林居士刻本・朱元鎮校刻本)の系統が最も原初の形態を保つ版本である。 2.やや時代が下って沈環の『南曲全譜』に基づいて校霰を施し、改訂が施された第H群(文林閣刻本・朱墨套印本)が別系統の版本として行われた。 3.しかしながら同系統の版本は、天啓・崇禎年間に至って傍系の第III群(詞壇双艶本・蒲水斎校刻本)に一部襲用されるにとどまる。 4.最終的には基本的に第I群に依拠しながら、第H・第III群での改訂をも援用した増訂版『牡丹亭還魂記』とでも言うべき第IV群(柳浪館刻本・清暉閣批点本・安雅堂刻本・独深居点定本・汲古閣刻本・張弘毅著壇刻本・竹林堂輯刻本)が完成された。第IV群は、湯顕祖が執筆した当初の姿に立ち返ろうとしており、第II・第IIIがごとき版本は、時代の推移とともに淘汰されていった。 5.このことは清代に至って、第IV群を底本とした第V群(三婦合評本・芥子園刻本・才子牡丹亭・氷糸館刻本)が行われることからも十分に首肯できよう。もちろん、第VI群の曲譜(格正詞調本・吟香堂曲譜本・納書檀全譜本)においても第IV類が底本とされている。
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