2004 Fiscal Year Annual Research Report
コンダクト・ブック文学論-小説にみるコンダクト・ブックの影響-
Project/Area Number |
16520222
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Research Institution | Tsuruga Junior College |
Principal Investigator |
五幣 久恵 敦賀短期大学, 日本史学科, 助教授 (90235002)
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Keywords | コンダクト・ブック / イライザ・ヘイウッド / 女流作家による18世紀英国小説 |
Research Abstract |
今年度は女子教育と女性性に限定したコンダクト・ブックの精査をさらに深めることと、ヘイウッドのヒロイン像を考察するため、以下を研究課題とした。 1.文献収集:コンダクト・ブック 17世紀中庸から18世紀中庸までのコンダクト・ブックを女子教育に限って見てきた結果、「控えめさ」と「貞淑さ」を女性の美徳と規定した当時の社会では、学問(learning)は嗜み程度でよいとされた。しかし、B.メイキンのように、女性にも歴史や、哲学、語学なども夫を補完するために必要と主張する者も少数ながら存在した。時代が進むにつれ、家庭という女性に与えられた領域内で力を発揮することを奨励するハリファックス卿などのコンダクト・ブック作家も出現してきた。男性作家の中にも、ビーコンのように女性の生来の知識の存在を認める者も17世紀に出現していたことが判明した。 2.小説との関連性-ヘイウッドのヒロイン像- コンダクト・ブックで理想とされる女性像が規定される中、理想像を具現化するヒロインと、理想から逸脱した女性像を描くという二流に分かれる傾向が見られた。前者の代表はパメラであり、後者の例は数多く見られる。その中から、特にヘイウッドの『フィーメール・スペクテイター』のヒロインに注目した。この中でヘイウッドは、若いうちの過ちは女性が自省を経て、自分の立場を考えるようになれば、やり直しが可能であり、結婚後は家庭という限定された領域であっても、女性が主体的に行動すれば幸せになれるということを示した。つまり、女性の主体性を重要視したヘイウッドの一貫したテーマが読み取れた。『フィーメール・スペクテイター』でそういったヒロインを描き、後の作品のヒロインへとつないでいったと言える。今までのヘイウッドの評価を変える見方が出来たことは本研究にとって大きい収穫だった。今後はヒロイン像に関してマンリーやデイビスの作品を続いて考察する予定である。
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