2005 Fiscal Year Annual Research Report
コンダクト・ブック文学論-小説にみるコンダクト・ブックの影響-
Project/Area Number |
16520222
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Research Institution | Tsuruga Junior College |
Principal Investigator |
五幣 久恵 敦賀短期大学, 日本史学科, 助教授 (90235002)
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Keywords | コンダクト・ブック / 18世紀英国小説 / イライザ・ヘイウッド |
Research Abstract |
今年度は18世紀中庸までの小説、特に当時「ロマンス」、「アマトリー・フィクション」などと呼ばれ、小説と定義されなかった女性作家の作品を取り上げて、反コンダクト・ブック的な女性像を分析し、コンダクト・ブックの影響力を探ってみた。これまでの考察により、女性規範の一部である「女子教育」に関してもすべて画一化されているわけではないことが明示可能となった。また、それらの表象がその後の小説のヒロイン形成に影響を及ばしたとも考えられる。とりわけ、イライザ・ヘイウッドの作品を研究対象とした。 1.文献収集と資料化:18世紀英国のコンダクト・ブックとヘイウッド作品 コンダクト・ブック関連の資料のコピー ヘイウッドのThe History of Jemmy and Jenny Jessamy(1753)同大図書館より貸し出し、コピー、分析。 2.作品に表象された女性性の分析 Love in Excess(1719)、The British Recluse(1922)、Fantomina(1725)、The Female Spectator(1744)、The History of Miss Betsy Thoughtless(1751) 3.男性作家への影響を分析 (1)リチャードソンにおけるヒロイン及びヒーロー、ヒーローの引き立て役など人物設定に顕著である。 Love in ExcessとPamela The British RecluseとClarissa (2)フィールディングの作品におけるプロットおよび人物設定が顕著である。 The History of Miss Betsy ThoughtlessとTome Johns 以上の結果から次のような研究成果を得た。昨今の「小説」の起源は何かという議論の元、18世紀の近代市民社会成立と同時にその価値観をあらわすものとして「小説」が生まれたという定説は否定できない。しかし、I.Williamの指摘通りに18世紀中庸まで「小説」、「ロマンス」「ストーリー」といった枠組みが並存し続けたのであり、本研究においても18世紀の英国小説史はデフォーやリチャードソンから始まるのではなく、「ロマンス」や「アマトリー・フィクション」から始まり、展開していくものと考える。これらからヘイウッドの作品が小説の発展に寄与したことは否定できないと言えよう。
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Research Products
(1 results)