2006 Fiscal Year Annual Research Report
コンダクト・ブック文学論-小説にみるコンダクト・ブックの影響-
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16520222
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Research Institution | Tsuruga Junior College |
Principal Investigator |
五幣 久恵 敦賀短期大学, 日本史学科, 教授 (90235002)
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Keywords | コンダクト・ブック / 18世紀英国小説 / イライザ・ヘイウッド / ロマンス |
Research Abstract |
本年度は、大英図書館やロンドン大学図書館で再度18世紀コンダクト・ブックの収集を試みたが、予想以上に入手できないことを痛感したため、現在手元にある文献で分析し、その結果を以下に示す。 1.D.マンリー夫人やヘイウッド作品におけるヒロインの動向を考察すると、「ロマンス」や「アマトリー・フィクション」、コンダクト・ブックなどが彼女たちに影響を及ぼしており、近代小説の起源や発展に寄与していたことが明らかとなった。つまり、17世紀末から18世紀初期のコンダクト・ブックや「ロマンス」に小説の萌芽を見ると言える。男性を補完する目的で女性に教育の必要性を主張したB.メイキンのAn Essay to Revive the ancient Education of Gentlewomen, in Religion, Manners, Arts & Toungues(1673)は、ヘイウッドの『フィーメール・スペクテイター』に多大な影響を与えたことは否定できない。 2.これまで真正の小説家として評価されてきたS.リチャードソンは、18世紀初期の「ロマンス」や「アマトリー・フィクション」、コンダクドブックの影響を受けていると捉えられる特徴が見られた。ヘイウッド作品と比較すると、人物設定などに類似点があり、またヘイウッドの特徴とするロマンス的な物語の展開も見られた。ヘイウッドらが描くヒロインたちは自立心が強く、性的表現においても肯定していた点で当時の男性作家とは異彩を放ってはいたが、女性が、抑制されたヒエラルキー社会への挑戦をするという新しい存在意義を示したことは評価し直す必要があり、男性作家には見られない点である。 コンダクト・ブックの内容も時代と共に変化する中、小説のヒロインもやがては「家庭内天使」型に変化を遂げていく。今後、更に当時のコンダクト・ブックが資料として活用されれば小説との類似点も発見されるはずである。
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Research Products
(2 results)