2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520238
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 伸治 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 助教授 (90201186)
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Keywords | ダイクシス / ドイツ語 / 原点 |
Research Abstract |
本年度は本研究の2年目にあたるが,主にダイクシス概念の整備をおこなった。具体的な研究実績の概要は以下のとおりである。 ダイクシス研究において原点という概念は基本的概念であるが,特に原点が転移する(原点転移)という問題はいまだ未解明の部分が多いと思われる。今年度はこの問題を主に考察し次のような知見が得られた。従来,原点は無標的な場合には発話者,発話時,発話場所に置かれ,有標的にはその他の項に置かれると考えられていたが,この考え方では不十分であり,原点が置かれる項に無標,有標の区別があるだけではなく,原点を置く側の主体にも無標,有標の区別があると考えたほうが,さまざまな現象をより一般的に説明できることを示した。また,原点を置く側の主体の有標性が問題になるのは特に引用節であり,また,原点が問題になる語彙,文法形式は,原点を置く主体の側と原点が置かれる側の有標性の二つの有標性が関与するものと,原点を置く主体の側の有標性のみが関与するものに分類できることを示した。これらの成果は日本語を考察対象とした論文として,日本語文法学会の機関誌,「日本語文法」第5巻第2号所収の「原点転移と引用節」という論文として公表されている。また,2005年8月26日から9月3日までパリで開催された第11回国際ゲルマニスト会議の第8分科会Lexik und Lexikologieにおいて,Zu Besonderheiten der in der Redewiedergabe vorkommenden lexikalischen Einheiten---Deutsch und Japanisch---というタイトルのもと,日本語とドイツ語の引用節においてダイクシスが関与する要素がどのような特性を示すか振る舞いについての研究発表もおこなった。
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Research Products
(1 results)