2005 Fiscal Year Annual Research Report
日英語の名づけのメカニズム:可能な語に関する制約の普遍性と言語間、範疇間の差異
Project/Area Number |
16520239
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
由本 陽子 大阪大学, 言語文化研究科, 助教授 (90183988)
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Keywords | 語形成 / 概念構造 |
Research Abstract |
日本語の複合形容詞と複合形容名詞においては、「かさ高い」「意地悪い」「幅広(の)」のように、主要部となっている形容詞が主語として叙述関係を結ぶような名詞が編入されているものが数多く見つかる。このタイプの複合で問題となるのは、一般に複合語内に編入されないとされている主語がなぜ編入可能なのか、また、語内で叙述関係が満たされてしまうにも関わらずなぜ新たに作られた語がまた述語としての機能を果たしうるのか、その項構造はいかにして導かれるのか、といったことである。Yumoto(2005)では、これらの複合語の多くが「な・の」を伴って用いられる形容名詞であり、また、形容詞として用いられるものもほとんどが「嵩だか(の)」「意地悪(な)」のように形容名詞にもなり得ることに注目し、以下のようなPustejovskyの生成レキシコン理論を用いた分析を提案した。すなわち、一旦項構造における複合により事象名詞が形成され、そのクオリア構造において編入された名詞の構成役割に示された「部分・全体」の関係にもとづく変項が、項構造に反映されることにより、新たな述語機能を獲得するという仮説である。この分析は、英語では本来許されない動詞とその目的語に当たる名詞との結合による従来「逆成」として片づけられていた、stage-manage,proof-read,brainwash,sightseeなどの複合動詞の意味解釈を説明するものであり、今後の課題は、日本語の他のタイプの複合語にも応用する可能性を探ることである。
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Research Products
(4 results)