2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16520241
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上田 功 Osaka University, 大学院・言語文化研究科, 教授 (50176583)
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Keywords | 音声学 / 音韻論 / 言語獲得 / 言語障害 / 心理言語学 / 音韻変化 |
Research Abstract |
本年度は、まず昨年度から継続した研究対象として、プロソディーの獲得を主としておこなった。まず、音節の獲得に関しては、言語障害児や失語症患者と比較・対照すべく、日本語母語話者の英語音節の獲得を調べてきているが、このデータをさらに詳細に分析し、獲得はランダムではなく、いくつかの過程を経るということが判明し、従来から主張している、「音韻獲得の背後には、精緻な規則性が存在する」という作業仮説を強化することになった。ちなみにこの結果は、Ueda(2007)で発表している。 またプロソディーの獲得に関しては、句や文レベルの強勢の配置にも興味深い問題を発見し、これを調査した。日本語を母語とする英語学習者は、例えば、形容詞+名詞の場合、形容詞に、WH疑問文の場合、疑問詞に、また否定文の場合、否定辞に、いずれも誤った句/文強勢を置く場合が多い。これは非常に上級の学習者にも共通して観察される事実である。この事象を説明するために、日本語からの音韻面での干渉であるという仮説を立て、まず母語の方言差異に注目した。具体的には、形容詞+名詞の場合、東京方言では形容詞にアクセントの下がり目がきて、大阪方言ならば逆に名詞にアクセントの下がり目がくる場合がある。このような文例の英訳を、被験者に英語で発音してもらい、誤りの差を量的に分析した。結果は予想通り、東京方言話者の方が誤りは多く、仮説を支持することになったが(Saito and Ueda 2007)、まだ予備的な段階なので、実験や考察に問題を含み、今後も継続して行いたい研究である。 最後に。本年度はこの補助金による研究の最終年度にあたるため、研究課題をふくんだ、日本語の音韻獲得と障害を簡便にまとめて、海外にも発信したものが、Ota and Ueda (2007)として、出版された。この種の出版物としては、初めてのものである。
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Research Products
(2 results)