2006 Fiscal Year Annual Research Report
東北地方におけるマタギ語彙の研究とマタギ語辞典の編纂
Project/Area Number |
16520245
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
板橋 義三 九州大学, 大学院芸術工学研究院, 教授 (50212981)
|
Keywords | マタギ語彙 / アイヌ系言語語彙 / 言語接触 / 借用語彙 / 瀕死の言語 |
Research Abstract |
今年度は被験者の関係で9月初旬に秋田県大仙市にフィールド調査に出かけた。秋田県大仙市では仙北マタギの語彙・意味を収集した。具体的には戸掘操さん、鈴木隆夫さんへのインタビューに先駆け、昨年作成した語彙表を携え、事前に戸掘さんに見ていただき、仙北マタギが使っている語のみに焦点をあて、その語の存在を確認するとともに、その使われている語彙の高低アクセントも確認した。マタギ語彙の収集と同時にそれにまつわるお話や組織の形態に関しても話して戴き、仙北マタギ全般についての知識をさらに得た。またこの他に仙北マタギの成員として活躍している若いマタギにも全員お会いする機会を得、特に小さい頃からマタギに親しんでいた渡部清孝さんにもマタギ語彙についてご協力願い、快く引き受けていただいた。今年度収集した語彙のデータベース化を推し進めており、現段階で入力し終わったところである。 今回の語彙調査で再確認したことはこれまで収集してきたマタギ語彙について60代以上の方にほとんどであるが、その地域によってマタギ語彙の認識や使用頻度に大差があることと、アイヌ系言語語彙の存在に関しては特にその差が著しいということである。これまでもマタギと称している人はある程度の人数はいると言われていたが、実際にマタギの儀式や豊富な知識、そしてマタギ語彙に精通している人はほとんどいないことが改めて再確認した。特に仙北マタギの中でも60代の方が何人かいるが、アイヌ系言語語彙はほとんど使われなくなっていたということが分かった。つまりそれほど仙北マタギではアイヌ系言語語彙が瀕死の状態となっていたということである。結局は一昨年インタビューを行った、「マタギの里」として知られる阿仁町比立内在住の松橋さんと青森県西津軽郡西目屋村在住の工藤さんしかアイヌ系言語語彙について確定できる人がいなかった。 これまで収集できたアイヌ系言語語彙は述べ語数が41語で、異なり語数が31語であることがわかったが、これはこれまで収集した語彙の最大値を提示しているのであり、地域によっては、例えば仙北マタギのようにほぼ1桁の語彙しか確認できないところもあった。正に瀕死の言語である。
|
Research Products
(1 results)